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千景の部屋を出て、アンティークショップの店舗スペースへと移動した奏、白石、創也の3人。

表向きは休業日である薄暗い店内に、古びた柱時計の秒針の音だけが静かに響いていた。


カウンターの裏に入り、手際よく新しいお茶を淹れ直しながら、白石がぽつりと言った。


「しかし、内部の犯行かもしれないとなると、協会(ファタム)の動きも早そうだな。これだけ派手にやらかしたんだ、間違いなく『本職』の調査員を学校に送り込んでくるぞ」

「そうだね。おそらく明日には何らかの動きがあるはずだ」


創也が頷き、淹れてもらったお茶を受け取る。


協会(ファタム)の調査員、か……」


奏は店に掛かっている鳩時計を見ながら、その存在を頭に思い浮かべた。

解決人(ソリスト)としての能力こそ持たないものの、彼らは徹底的に鍛え上げられた人離れした実力を持つプロフェッショナルだ。


「奏は偽装してないちゃんとした高校生だから、別に問題はないはずだよ」

「わかってる」


奏がそう答えた、その時だった。

カラン、と静まり返った店内に、入り口のドアベルが小さく鳴り響いた。

営業終了の札を出しているはずの扉を押し開けて入ってきたのは、ひどく怯えた様子で周囲を気にしている一人の男だった。

使い古されたアタッシュケースを両手で固く握りしめている。


「……ここに行けば、金を積めばどんな依頼でも受けてもらえると聞いてな。本当に、やってくれるんだろう?」


白石はカウンターに肘をついたまま、値踏みするような視線を男に向けた。


「おいおい、うちはただのアンティークショップだぜ? ……と言いたいところだが、紹介状の筋は通ってるみたいだな。いいぜ、座れよ」


依頼。

そう、このアンティークショップは奏とその仲間の拠点であるだけでなく、四人が活動するための窓口でもある。

このようにしていきなり人が入ってくることも珍しくない。


男は促されるままにソファーへと腰掛け、机の上にアタッシュケースを置いた。パチリと音を立てて開けられたケースの中には、綺麗に揃えられた札束が詰まっている。


「これが手付金だ。頼みたいのは、ある『荷物』の回収と、それを狙う連中の足止めだ。実は……」

「待て。悪いがこちらは依頼を選ぶんだ。金は終え。話を先に聞く」


大金を先に受け取ってしまえば依頼を遂行しなければならない義務が生じる。


「……分かった」


男はゴクリと唾を飲み込み、開けたアタッシュケースから一度手を離した。

依然として視線は泳いでおり、酷く怯えた様子で声をさらに潜める。

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