目的
「有栖さん」
「なんだ?」
有栖は作業中の蒼井の隣でニコニコしている。
「本屋に来られているのに本を見なくていいの?」
「ああ。本が目的という訳ではないからな」
有栖は尚ニコニコしている。
蒼井は有栖の膝の上に乗っている猫を見て、猫目的かと納得した。
「蒼井はどうしてここでアルバイトを?」
「元々、常連だったの。その縁もあってたまたま求人を見つけて、許可されたから」
蒼井は猫を撫でながら答えた。
「…そうか。あまり、無理はするなよ。そろそろ定期テストだろ?」
「来週からは、定期テスト期間でアルバイトは休みなの。点数を下げる訳にはいかないしね」
有栖はいつもの時間に帰って行った。
「おばあさん、そろそろ店を閉めますよ」
「ああ、あの子が帰ったのかい。声がここまで聞こえていたよ」
おばあさんはいい匂いをさせながら奥から歩いてきた。
「すみません、うるさかったですね」
「いいや。いいお友達じゃないか。お客さんが他にいる時は静かにしているし、仕事にも支障をきたしていない。
何も咎めないさ」
おばあさんは器用にシャッターを閉めた。
「蒼井、友達を大切にしんさい。友達を無くしたら、きっとお前さんは動けなくなっちまうよ」
「…そうですね」
(でも、私には友達が居ない)
蒼井は思ったことを決して口に出さないように奥に押し込めた。
だれも都合が良くて付き合いの悪い蒼井と友達になろうとしないと、蒼井はわかっていた。




