お泊り会(玉兎視点)
「お邪魔します」
「ああ、座っておいてくれ。少し片づけてくる」
有栖さんが二階に上がっていって、わたしはソファーの周りで突っ立っている。
ここが有栖さんの家……
思っていたよりもずっときれいで新しくてしっかりとした一軒家だ。
ほとんど散らかっていなくて、ほんとうにここで有栖さんが生活しているのか疑問に思ってしまうほどだが、ところどころに生活感が残されている。
例えば窓際におかれた洗濯籠だったり、倒れている掃除機だったり。
きょろきょろしていると、後ろから声をかけられた。
「座っておいてくれてかまわなかったのだが」
「ああ、うん」
いつの間に戻ってきていたのだろうか。
「上の部屋を使ってくれ。長いこと誰も使っていなかったから、なにかあったら遠慮なく言ってくれてかまわない」
有栖さんについて上に行くと、机などが備え付けられたきれいな部屋に案内された。
「ここをつかってもいいの?」
「ああ。それと、明日の昼前にはつきの母親が来るらしいから、そのつもりで」
かあさまが?
「荷物を持ってくるそうだ。さすがにそのままではまずいだろう」
「ああ、そういうこと」
下に降りて有栖さんがいれてくれた紅茶を飲んでいると、有栖さんが紅茶を一気に飲み干した。
「……ふう」
そして、きらきら光るカップをおいて、ぽつぽつと話し始めた。
姉さまと出会っていたこと、やっていたことを。
「そうだったんだ。新原って、かあさまの苗字でもないから、もしかしたら再婚したのかな?」
「あ、いや。紫苑さんは既婚者だ」
ねえさま、結婚していたの?!
「そうなの?!」
「ああ。新婚らしい」
知らなかった……
「また会いに来ると思うから、その時にでもゆっくり話せばいい」
「うん、そうだね」
こんどはしっかり、ゆっくりと会いたいな。
ねえさま、とっても落ち着いてきれいな人になっていた。わたしもああなりたい。
「寝ようか」
部屋にもどろうとする有栖さんの服の裾をつかんで引き留める。
「一緒に寝てもいい?」
「……は?」
有栖さんは明らかに驚いた表情をしている。
「ちょっと、色々あったから。嫌なら全然いいのだけれど」
「いやではないが」
ならよかった。
勢いに任せて、そのまま一緒に寝るよういを整えた。
有栖さんは頭を抱えていたが、最終的にしぶしぶといった様子で隣の布団に入ってきてくれた。
人が近くで寝ているなんて初めてで、あたたかくて安心して、すぐに寝てしまった。




