家族(玉兎視点)
かすかに聞こえた邪魔という父の声。
「どういうことなの」
紫苑さん……姉さまの声が一段低くなる。
隣のひろこちゃんは無表情だが、わたしの手をしっかりと握りしめてくれた。
しばらくして、姉さまはしっかりと確認を取る。
「……わかったわ。しばらく妹がその家にいなければいいのね?」
その言葉を最後に、姉さまは電話を切った。
「姉さま、どういうことなの?」
後ろから声をかけると、姉さまは大きくため息をついた。
「あなたの父さんと母さんが離婚騒動をしているそうよ」
それは、意外なことではなかった。
ここ数日の家の雰囲気や会話は、そう思わせるのに十分なものがあった。
重苦しくて、粘り強い。
「……はい。お世話になります」
久々に姉さまと過ごせる。
その喜びと罪悪感が沸き上がった。
「いえ、わたくしではないわ。
ひろこちゃん、妹がいても平気よね?」
いきなり話を振られた有栖さんはとても困惑しているのが表情から伝わってきた。
「あたしの家に来るのか?」
姉さまは落ち着き払っている。
「ええ。わたくし、今ホテル生活よ?シングルルームでとっているから、人が増えるのは無理なのよ。
ひろこちゃんの家は部屋が余っているでしょう?」
にこにこして話を進める姉さまに、有栖さんは頭を抱えている。
この二人の会話は、聞いていてとても安心する。
「紫苑さんはあたしの家に来たこともあったな……
確かに部屋はたくんあるからできなくはないが、つきはそれでいいのか?」
「え、わたし?」
確認されると思っていなかったので、驚いてしまった。
「ひろこちゃん、わたしがお邪魔して迷惑じゃない?」
「困ることはない」
それは、受け入れてくれているととってもいい反応だ。
有栖さんはそういうところがわかりにくいけれど、底なしにやさしいところでもある。
「なら、このままひろこちゃんの家まで行きましょうか。
あなたの両親にはわたくしから連絡しておくわ」
そうして、急遽有栖さんの家にお邪魔することになった。




