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きれいなひと  作者: 宵ノ雪
第二章 家族
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有栖さん

鈍行の電車で4駅。


遠いかと言われればそうではなく、近いとも言い切れないあたりで私たちは電車を降りて、バスに乗ってさらに山に向かう。


終バスの時間が気になったけれど、有栖さんは何も気にしていなかったのできっと平気なんだと思う。


「うわぁ、初めてだ」


有栖さんに連れられてやってきたのは高台だった。


「ここに来るのがか?」


「それもだけど」


夜に外に出るのも、友達と遊びに行くのも、全部がはじめて。


「ひろこちゃんは、私にたくさんの初めてをくれるね」


友達になってくれたのも、一緒にアルバイトをしたのも、何も聞かずに一緒にいてくれるのもはじめて。


顔をのぞきこむと、有栖さんはふいっと顔をそむけてしまった。


有栖さんは結構照れ屋だ。


「そうでもない。あたしのほうがもらっている」


そう言って有栖さんは下を見つめた。


あまりビルがない地域なので、ほんのちょっとの高台でもよく下が見える。


「きれいだね」


ほんの少し身を乗り出して下を見る。

すっかり夜になっているから、海の方から風が吹き付けてくる。


ここにきてしまったことへの罪悪感や恐怖は消えない。


それでも、とても満たされた思いになる。


「つき」


耳障りの良い、やわからな声で有栖さんに名前を呼ばれて振り向く。


「こっちに座ろう」


指し示された椅子におとなしく腰を下ろす。


「時間は大丈夫なのか?」


有栖さんは心配してくれる。


有栖さんはいつも、わたしを否定しない。


その言葉の少なさに、どうしようもなく救われる。


「うん、いいの」


今は、帰りたくないから。


だから有栖さん、何もしなくていいからここにいて。



ここにいさせて。



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