また明日がある
「おばあさん、こんにちは」
蒼井が声を掛けると猫と戯れていたおばあさんが顔を上げた。
「あれ蒼井ちゃん、今日は早いのかね」
「始業式で早く終わったので。いつもの時間までいてもいいですか?」
おばあさんは快く受け入れてココアとお菓子を出してくれた。
蒼井は早速本の仕分けにかかる。
ダンボールで届く本を分類ごとに棚に入れていき、ポップを作るという作業だ。
面倒なことを一気に終わらせようと集中していたらしい。
店内に人がいるのに気が付かなかった。
「これ」
声と、視界に差し込まれた本に驚いて机の上を片付けた。
「はい。
六百六十円になります。カバーはおかけしましょうか?」
「いらない。袋も」
ぴったりの金額を渡されて、レシートを出す。
「はい、ありがとうございます」
「ありがとう、蒼井さん」
いきなり名前を呼ばれてびっくりして、蒼井はようやくしっかりとお客さんの顔を見た。
すらっとして、かっこいい女の人で…
「覚えていないか?同じクラスの有栖だ」
「いえ、覚えています。ここの常連さんですよね」
流石にそんな薄情ではないと慌て否定すると、有栖の目が少し大きくなった。
そして嬉しそうに目を細めた。
「そう。じゃ、また明日」
蒼井はその言葉をぐるぐる考えてしまい、そちらに夢中になってしまった。
おばあさんの声に気が付かず、手元のポップになるはずだった紙が変なところでくっついてしまったぐらい。




