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夕方五時のそのあとは

「お帰り。遅かったじゃない」


「…ただいま」


玄関から部屋まで綺麗に整えられた部屋。


花が飾られ、ほのかに人工的ないい匂いもする。


蒼井は笑みを浮かべてきれいに整えられた食卓についた。


「明日、クラスが一番上じゃなかったら許さないから。わかった?

あなたならできるよね、優秀だから」


「はい」


蒼井はまた笑みを浮かべて頷いた。


胸に風穴の空いたような違和感を感じながら。




朝、いつもより焦る気持ちを抱えて蒼井は学校に向かった。


きっと、クラス分けで一番上のクラスに入って喜ぶより先に安堵したのは蒼井ぐらいしかいなかっただろう。


クラスでは出席番号順で席が一番前だった。


蒼井にはあまりこういう時に話す人がいないので、先生が来るまで一人で過ごす。


後ろから視線を向けられていたことに、蒼井は気が付かなかった。


そのあと眠いだけの全校集会に行き、HR。


「それでは初日らしく自己紹介でもしましょう。出席番号一番の人から、どうぞ」


担任の先生に話を振られて蒼井は慌てて立ち上がってまとまらないまま自己紹介をする。


「蒼井玉兎です。よろしくお願いします」


蒼井は咄嗟に幾つか考えていたものの何も飾り気がなくなってしまったことを後悔しながら後の次の人を見る。


「…有栖洋子」


一つ後ろの人を見て、蒼井は驚愕した。


(あの人、高校生だったんだ!)


有栖洋子と名乗った人は、いつも本屋に訪れるあの人だったのだ。


有栖が座るとき、パチっと目があった気がした。


けれど有栖はすぐに視線を後ろに向けてしまったので、勘違いかと思った。

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