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きれいなひと  作者: 宵ノ雪
第二章 家族
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前夜(有栖視点)

「あー!もう、父さんはほんとに仕事をしない……」


「どうかしたのか?」


ひさびさに紫苑さんに呼び出されて向かってみると、紫苑さんはだいぶ荒れていた。


「私たちの父さんが、ほんとに家のことは何もしない人なのよ。

それこそ、家にほぼいないレベルに」


紫苑さんはおおきなパンケーキを頼んだ。


「家のことを知らないから、蒼井さんのことも知らないと?」


「おそらくね。

私の母親が私にしていたことを知って離婚するという判断をするぐらいには常識があるけれど、母親が私を連れていくことには反対しなかった人よ」


それは……


「奇妙だな」


「ええ。有栖ちゃんは、玉兎が母親に怒られるという発言を複数回していたと言っていたわね?」


初期のころに紫苑さんに問い詰められてしゃべったのだ。

だからこそ紫苑さんは今も玉兎に会いに行っていない。


「父さんならと思って父さんに接触してみたのよ。

そしたら案の定。離婚して再婚しても全く変わってないわね」


呆れたと言い手を振る紫苑さん。


「確定したわけではないから、家にいるのかどうかってことを尋ねただけなのだけれどね」


それでも、よくないことには変わりなないのだろう。


「紫苑さん、あたしはなんでも協力するから、なんでも頼んでくれ」


紫苑さんはにこりと笑った。


「玉兎のこと、大切なのね」


「ああ」


あたしを救ってくれた玉兎に、あたしは何でもしてやりたい。


「持つ熱量が違うかもしれないわよ?」


「……それでもいい」


端から、同じ思いを持ってくれているとは思っていない。

いなくなるかもしれないし、あたしのことを嫌いかもしれない。


それでも、なんでもしやりたい。


「ありがとうね」


紫苑さんはいとおし気に微笑んだ。

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