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姉の思い(有栖視点)
「私は先ほど話した通り、家族と仲がいいというわけではありません」
紫苑さんは淡々と語り始めた。
「私は今年就職して家を出ました。
そして少し余裕が出てきたので、久しぶりに妹に会いに来ました」
ですが、と彼女は続ける。
「私が突然会いに行ったとしても、妹の状況が全く分かりません。
昔の私のようになってたとすれば、いきなり会いに行ったとしてもなにもできません」
あきらめとなつかしさを含んだ表情で少し息を吐きだして外を見る。
もう日はすっかり沈んでいて、ほんのりと明るさが残った空がひろがっている。
あたしはふと違和感を覚えた。
「心配なら、蒼井さんが大切ならそういえばいい」
なのに、紫苑さんは今まで一言もそれを口にしていない。
「……私がそう言ったところで、あの子には理解できないでしょうから」
紫苑さんは飲み物を飲み終わって、おかわりを注文した。
「親に大切にされたという記憶がないと、人を大切にするということがわかりずらいですからね」
紫苑さんはそれを当たり前として受け入れている。
「蒼井さんにそれとなく聞いてみようか?」
「本当?
助かるわ、ありがとう」
やれやれ。
これが妹ばかというやつなのだろうか。




