お久しぶり(有栖視点)
蒼井と仲直りしたその日、蒼井はいつものようにアルバイトに向かった。
「こんにちは、おばあさん」
「おやいらっしゃい蒼井ちゃん……おや?」
蒼井の後ろからおずおずと顔を出す。
「こんにちは」
おばあさんはにっこりと笑って私も奥に入れてもらった。
「いらっしゃい。ゆっくりしていきな」
「ありがとうございます」
それから。蒼井とともに店を手伝った。
掃除をして、ねことあそんで、接客をして、お茶をして。
あっという間に閉店間近になって人も少なくなった。
「今日は楽しかった。ありがとうね」
「うん。ほんとに楽しかった」
ふふ、と顔を見合わせて笑った。
「お二人さん、楽しそうだね」
「はい。友達ですから」
はにかみながらそう宣言する蒼井を見てうれしさがこみ上げると同時に、少し寂しく思った。
蒼井にとって、私は”友達”だと突き付けられたようなものだ。
抱きしめてくれても、いなくならないでと懇願されても、それでも私は蒼井の友達でしかない。
好きだと思ってほしい。
でも、蒼井のこの歩み寄りは素晴らしいものだ。
だから、まったく不満ではない。
「そろそろ閉めようか」
「「はい」」
二人で外のベンチや看板を中に入れて、閉店準備を済ませる。
「やっぱり人が増えると違うねぇ。有栖ちゃん、ここで働く気はない?」
「私は…」
蒼井と一緒に働けるという甘美な誘惑にあらがうのは大変だったけれど、首を振った。
「まだ未成年なので保護者の同意が必要ですが、私に保護者はいないので」
私はどう頑張っても働くことができないのだ。
それに、蒼井とそんなに長くいたら失望されてしまうかもしれないし、いつかこの気持ちに気が付かれるかもしれない。
そんなのはいやだったから、何とか踏みとどまった。
その日は、一緒に帰った。
「私ほこっちだ。また明日」
「うん、またね」
また明日、と言える幸せをかみしめながら公園に差し掛かった時、ひとりの女性が公園の周りをうろうろしているのを見つけた。
全体的に清潔感のある服装をしているし、身なりからして怪しい人ではないのだけれど、
行動が怪しすぎる。
声をかけようか、いや、ああいう人は無視した方がいいと早足になって通り過ぎたとき、その人が腕をつかんできた。
「え……」
怖い。
全力で振り払おうとしたが、それより早く彼女が叫んだ。
「ひろこちゃん!」
「え?」




