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きれいなひと  作者: 宵ノ雪
第一章  孤独
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またそばに

蒼井が彼女と別れて学校内を歩いていると、有栖に遭遇した。


有栖はすぐに目をそらしてどこかに行こうとしたので、蒼井はその袖をつかんだ。


「有栖、さん」


蒼井は久しぶりにその名を口にした。


振り返った有栖は、自然な動きで蒼井の手を外してしまった。


「どうかしたのか?あの子はどうした?」


蒼井を心配する有栖の瞳にはあの頃と同じぬくもりがあったが、有栖は元の友達のような距離では話していなかった。


当然のように蒼井が有栖のところに行かないと思っている口調に、蒼井は胸が締め付けられた。


二人で人気のないところに移動する。


「どうして、来なくなったの?」


蒼井は勇気を出して聞いてみた。


「私は迷惑なのだろう?よかったじゃないか、迷惑な客がいなくなって」


有栖そう言って笑った。


何もかもあきらめた笑いだ。


蒼井は、その笑いを見たことがあった。


蒼井は有栖の顔を見たくなくて下を向いた。


「迷惑じゃないよ」


「ん?」


有栖は逃げない。


たったそれだけのことが、蒼井にとっては何よりもうれしいことだった。


「どうして来てくれないの。

有栖さんと、せっかく友達になれたと思っていたのに」


蒼井はほんの少し顔を上げて、有栖の顎のあたりを視界に入れた。


「会いに来てよ」


だが、有栖はその言葉を真に受けることはなかった。


「月はやさしいな。でも、私に気を使わなくてもいいんだ。

ほら、あの子たちのところに戻ったらどうだ?」


蒼井はどうすれば有栖と元のように戻れるかを必死に考えた。


迷惑だと思ってないと言っても無駄だった。だったら……


「いやだ」


「え?」


蒼井はキッと有栖の顔をにらむ勢いで見つめた。


「有栖さんがいい。有栖さんがいれば、私はほかに誰もいらない。

だから、お願いだから、」


離れていかないで。


そう言おうとしたけれど、それは言葉にはしなかった。


その代わり、有栖の胸元に飛び込んだ。


「つき……?」


かすかにふるえた有栖の体を離すまいと、蒼井は制服をつかむ手に力を込めた。


「どうして離れて行っちゃったの。私が迷惑だって言った?」


「だって、あの時……それに私は……」


有栖は言いたいことのすべてがうまく言葉にならなかった。


蒼井がいま縋り付いてきているという状況に、頭が追い付いていなかった。


「有栖さん……うんん、ひろこちゃん。

戻ってきて。また、そばにいて」


有栖は、かたまってしまった。


その呼び方をかつてした人物は、たった一人。


「……どうして、その名前を。つきは、覚えて……?」


「覚えてる。私のたった一人の大切な友達だよ」


有栖は、視界がぼやけていくのを感じた。


蒼井のその背中に手を伸ばす。


蒼井がいたくないように細心の注意を払って、蒼井を抱きしめた。


「私は、迷惑ではなかったのか……?」


「うん。むしろ、いつも来てくれてうれしかった」


ひとつ、肯定されるたびに有栖は心がほぐれていくのを感じた。


「私は、つきのそばにいてもいいのか…?」


「うん。ずっと、いて」


蒼井は、両手を有栖の背中に回してしっかりと抱きしめた。


そのとき、大きな予鈴のチャイムの音が鳴り響いた。


するりとどちらからとなく手をほどく。


「休み時間終わるね。戻らないと」


「ああ。また、な」


教室に戻ると時間ぎりぎりだった。


先ほどの彼女が二人で戻ってきたのを見て、ニコリと笑ってぐっとマークを立ててきた。

ε-(´∀`*)ホッ


気が付いたら次まで書いてました。次も投稿しときます。

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