表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きれいなひと  作者: 宵ノ雪
第一章  孤独
PR
19/23

雨上がり(有栖)

それから何年もたった。


両親はあれから見つかることなく書類上死亡し、育ててくれた祖母も亡くなった。


祖母の希望で高校に入り、実業系の学科に所属した。


今思うと、あの後つきに会いに行こうと思えば会うことは簡単だったのだろう。


あんな小さな子供で、同じ公園にたまたまいることがあるのなら、家は相当近かったはずだ。


けれどその考えに至るまでに時間がかかりすぎてしまった。


会ったところでお互いがわからないかもしれないほどに、時間がたっていた。


だから探さないでおこうと、そうあきらめて過ごしていた。



私は失ったことにより自由を手に入れた。


誰にも干渉されることのない自由を。


けれど、つきは今でもああやって過ごしているのだろうかと、時々ふと思い返す。


両親が言うから離れて、両親に傷つけられて。


助けに行きたい。


けれどどこにいるのかはわかっていなかった。



その日は、学校から帰った直後に雨が降り始めた。


ゲリラ豪雨のようなもので、三十分ほどですぐにやんだ。


買い出しに行かなければならなかったので、すぐにスーパーに向かった。


帰りはちょうど夕日がさす時間で、せっかくだからと少し遠回りして帰ることにした。


坂に差し掛かった時、いい雰囲気の本屋を見つけた。


猫が窓際で寝ていて、雨上がりのあたたかな夕日が差し込んでいる。


店の中を覗いてみると、カウンターでは同世代ぐらいの女性が下を向いて作業をしている。


はっと、その女性が顔を上げた。


とてもきれいな、彼女の雰囲気は覚えのあるものだ。


「つ、き」


見間違うはずがなかった。


あれは、つきだ。


何を言おうかと考えながら、店に入る。


カランカランというドアにつるしたベルの音が思っていたよりも大きく店に響いた。


彼女の目がこちらを向く。


何を言おう。

今、泣きそうなほどにうれしい。


動けないでいると、彼女が口を開いた。


「いらっしゃいませ」


そこで、はっとした。


やはり、彼女は私のことを覚えていないのだ。今の私はただの客だと、そう突き付けられた。


それでも、彼女のそばにいたかった。



クラスが同じになったとき、本当に驚いた。


初めて彼女の名前を知ることができた。


『蒼井 玉兎』


もう、引き裂かれたくなかった。


この機会を逃すわけにはいかないと思った。


すぐに、彼女に声をかけた。


私の行動が間違っていたと思わない。


彼女を助けるためならなんだってやりたい。


また、引きはがされて、何もできないなんてことにはしたくない。


教室で一人でいる彼女を見ていたくなかった。


だから、私は彼女に差し出すことにした。


「少しいいか?」


「はい?」


持てる最大限の私のつながりを、すべて彼女のために使おう

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ