いつもどおり
それから、蒼井と有栖が言葉を交わすことはなくなった。
ちょうど席替えがあり席がかなり遠くになってしまったのも後押しして、二人の交流はゼロに等しくなった。
ごくまれに有栖と目が合っても、すぐにそらされてしまう。
蒼井はすこしの息苦しさを感じつつ、それでも今まで通りに過ごした。
学校に行き、昼は一人で食べ、放課後に本屋にアルバイトに行き、帰る。
学校にいる間は誰ともしゃべらない。
それがいつも通りで、なにも困ることはなかった。
「最近、あの子来なくなったね」
「はい。でも、来るのは彼女の自由なので」
有栖はあくまでただの本屋の客であるということを意識して、蒼井はおばあさんに返事をする。
「そうかい。蒼井ちゃんは、それでもいいのかい?」
蒼井はそう言われてしばらく黙った。
そして、もろもろの葛藤を丸め込んでうなずいた。
「はい」
おばあさんはちょっと考えてから外に出た。
「もう閉めようか。しばらくのんびりしていきな」
「どうしてですか?」
おばあさんは答えずにガラガラとシャッターを閉じてしまった。
「ほら、ここならだれにも見つからない。
話してみんさい。蒼井ちゃんの話を聞くさかい」
「なにか、話すことがありますか?」
おばあさんは蒼井の正面に座ってお茶を取り出した。
「こうしてのんびり話せる機会なんてなかったろ。
しばらくこのおばあさんの話を聞いとくれ」
おばあさんはそう言ってとりとめのない話をした。
「それは大変でしたね」
「そうそう、本当にな」
おばあさんは何も問い詰めてくる気はないように見えた。
『蒼井ちゃん。あたしゃ蒼井ちゃんが何を抱えてるかなんてわからんよ。
ほいでも、ここにおる間は守ってやるさかい、安心し』
おばあさんは、蒼井をバイトとして雇ったときそう約束した。
そして、それは蒼井がおばあさんに打ち明けたいと思う理由になった。
「おばあさん、あの、私、」




