第6話 - 突然の通達 -
先生は、いつもより真剣な眼差しだった。
「全員座れ。今日は騎士団からの通達がある。」
騎士団からの通達?
今まで聞いたことがない。
ざわついていた教室が一気に静まり返る。
「突然だが、来月の頭に入団試験が実施されることとなった。今からプリントを配るが、希望者は用紙を記入して放課後までに持ってこい。以上。」
来月に入団試験だって…?
4月にあったばかりじゃないか。
…まぁ、どうだっていい。
チャンスだ。
近頃のおかしなことをもっと知るには、騎士団に入るしかない。
「なんかお前、嬉しそうじゃん。」
ニヤ付きながら、ヨミから喋りかけてきた。
俺はすぐさま答える。
「こんなチャンス、誰だって喜ぶだろ。」
「じゃあ、受けるんだな?入団試験。」
「もちろんだ。」
話していると、俺の背後から気配を感じた。
そして、ヨミも俺の背後を見始めた。
「まじウケる。お前みたいな非能力が受かるわけねぇじゃん。冗談だよな?」
振り返ると、やっぱりあいつらがいた。
何を言っても無駄な連中だ。
でも、今日は抑えきれなかった。
「本気さ。」
「マジで言ってんの?やっぱ、お前見てると腹立つわ~。」
一体、俺が何をしたって言うんだ。
どんどん頭が熱くなってくる。
….嫌いな感覚だ。
「なんか言ったらどうなんだ?」
次第に見かねたヨミが、口を開いた。
「まぁ、試験は能力が認められた奴が受かる。ただそれだけさ。」
こいつらは、ヨミに強く言い返さない。
ヨミと仲が良い女子たちから、嫌われるのを恐れているからだ。
相変わらず小さい奴らだ。
「ヨミ、お前は相変わらずだな。せいぜいお前も頑張れよ。」
舌打ちして、何人かを連れて、教室を移動した。
「悪いな。」
ヨミのおかげで冷静になれた。
正直、今の俺にとって、こいつがいない学校生活は想像したくない。
「なんてことねぇよ。でも、厳しいことを言うが、あれが"普通"の評価だぜ。ミル。」
いつもおどけて見せるが、今日は違っていた。
「…あぁ、分かってる。」
「それでも変わらねぇのか?」
「当たり前だろ。」
「安心した。でも、無茶だけはすんなよ。」
ヨミと用紙を書いて、職員室に出した。
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入団試験の前夜、いつも通りトレーニングをしていると、見たことある後ろ姿がチラついた。
気になって、ランニングで近づくと、立花がいた。
思わず声をかけた。
「誰か待ってんのか?」
「あ、ごめん。邪魔しちゃった?」
「いや」
立花は少し暗い顔をしていた。
相変わらず表情に出るタイプだ。
「なんかあったか?」
「ううん…違うんだけど。」
視線を落としながら、ぽつりとこぼす。
「明日、上手くできなかったら怖いなぁって。」
「試験のことか?」
「うん。」
「自信ないのか?」
「今までやってきたんだけどね。」
立花なら大丈夫——そんな格好いい言葉は出てこなかった。
誰が言ってんだって、思われる気がした。
それでも、隣に立ちたかった。
抑えていた思いが、口をついて出た。
「俺は、絶対に受かってみせる。」
「え?」
「"お前なんか受かるわけない"って、今日も言われた。正直、手が出そうになったが、早く明日になってほしいんだ。」
「どうして?」
「もし俺が受かったら、そいつらどんな顔するだろうなって」
「なにそれ。」
立花は、くすっと笑った。
「だから、絶対受かってやるんだ。」
「絶対スカッとするね。それ。」
「だろ?だから立花も受かれ。」
「え?」
拍子抜けしたように、目を見開く。
「俺だけ受かっても意味ないだろ?」
一瞬、間を置いて。
「…分かった。私も絶対受かる。」
俺たちは、万全のつもりで明日に備えた。
——このときの俺が、どれだけ甘かったのかも知らずに。




