第4話 - 二人だけの真実 -
ファーンファーンと、
街中に警報音が鳴り響く。
「ー 能力の使用を確認しました
聖騎士団へ緊急要請中です
一般市民の方は直ちに避難してください ー」
俺たちが、現場に到着すると
手から炎を放つ長身の男性と
焦げて横たわる女性がいた。
「能力犯罪だ…。」
「どうして、酷い…。」
俺が能力犯罪者に出くわしたのは、
今回で、2度目だ。
1度目は、地元の夏祭りだ。
50名以上の死傷者を出した事件で
テレビにも取り上げられるくらいだった。
だから、どんな被害が出るか
ある程度、想像がついた。
奥歯を軋ませ、ようやく口を開いた。
乾いた声を出た。
「立花、逃げよう…。」
「でも…。
あの女の人は…?」
「騎士団を待つしかない」
立花の身体が震えている。
だが、その目は揺れていなかった。
「じゃあ、私が時間を稼ぐ。」
「ダメだ!前科持ちになるぞ!」
「でも….。」
炎を纏った男が、手を振りかざした。
「もっといたぶってやるよ。」
どんどん炎が大きくなる。
「….ダメ!」
汗まみれの湿った手で
スカートを握りしめ
立花は、犯罪者の前に出た。
「もう止めて!」
炎が一定の大きさを保つ
「あ?なんだお前?」
「やり過ぎだよ...。」
「は?関係ねぇだろ。」
「みんな、怖がってる...。」
「だから、関係ねぇだろ!」
「どうして...?」
立花の願いは届かず
犯罪者の怒りは収まらない。
「我慢の限界なんだよ!!ガキは引っ込んでろ。」
「止めてよ..。」
「こいつらのせいで、国が終わってんだよ。
お前知ってるか?」
「何が...?」
「こいつら、食べ物なくして
人を殺して、自分は美味い飯食ってる。」
「分かんない...。」
「国民もバカ。もう暴動しかねぇのによ。」
「...。」
「どうせ、お前も騎士になりてぇんだろ?
バカがまたなっちまうなぁ…。
もう、ここで死んどけよ。」
「いや...。」
「お前みたいな勘違い女が
一番キモいんだよ!!」
指先に集束した炎が膨れ上がる。
轟音とともに、立花へ撃ち出された。
気づいた時には、体が勝手に動いていた。
俺は炎を全て腕で受け止めていた。
「うおおおおお!!」
灼熱が襲いかかる。
皮膚を焼くはずの炎が、まるで弾かれたように身体をすり抜けた。
衝撃で後ろへ押される。
それでも、踏みとどまった。
「は?」
「君…。今…。」
「そうか、お前も能力を使っちまったな!」
「違う。俺は生まれつき"非能力者"だ。
ただ、俺には効かない。」
「そんなの…聞いたことない…。」
「落ちこぼれの分際で、舐めやがって。
次は全力で撃ってやるよ!!」
「まずいな…。」
犯罪者がさらに炎を大きくし
唱える。
「能力解放….。」
「そこまでだ。」
声と同時に、空気が裂けた。
一閃。
犯罪者は崩れ落ちた。
白いローブ。
十字架の紋章。
聖騎士団。
「早すぎる…。」
こうして、この事件はあっけなく幕を下ろした。
━━━━━━━━━━━━━
次の日。
朝食を食べながら、ニュースを見ていると
昨日の事件について喋っていた。
「次のニュースです。昨晩、違法ドラッグを服用した男性が、能力使用罪で現行犯逮捕されました。男性は金銭目当てだったと供述しております。聖騎士団が速やかに鎮圧し、死傷者は"0人"でした。」
「は?」
違う。
犠牲者は出ていた。
しかも、金銭目的じゃなかった。
「どういうことだよ…。」
夢を見ている気分だった。
急いで学校に向かった。
「昨日の事件のニュースを見たか?」
「あぁ、みたよ。」
こいつは、昨日現場にいたやつだ。
野次馬のように俺たちを見ていた。
「なんか、ニュース変じゃなかったか?」
「いや、そのままじゃね?」
「ほら!ケガ人もいたし、暴動とか言ってた!」
「…..。何言っているんだ。お前。」
「…え?」
「金よこせって立花ルミを襲ってたじゃん。」
「…は?」
急に背中が冷たくなった。
他の奴に聞いても
こいつと同じことしか言わない。
全員、俺がおかしい奴だと
思っている。
「神尾くん!!」
焦った様子で、立花が駆け寄ってきた。
立花の顔を見れば、すぐに分かった。
――昨日のことを覚えている。
そう言っているようだった。
この世界でルミと俺だけが
――あの事件の"真実"を知っている。




