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第3話 - 弱音と建前 -

「あなたはいいね。好きなように生きて。」


「ちょっと疲れてきちゃったなぁ。」


立花が真剣な眼差しで

猫に弱音を吐いているように見えた。


俺はなぜか、居ても立っても居られなくなり

つい声をかけてしまっていた。


「猫に人生相談でもしているのか?」


「え!?」


今朝も見たような慌てた表情で

振り返り、恥ずかしそうに聞いてきた。


「もしかして、今の聞いてた?」


「立花って、猫になりたいんだな。」


「絶対、全部聞いてたじゃん!」


「そうなったら、猫じゃらしあげるから安心してくれ。」


「馬鹿にしてるでしょ?」


「悪い悪い。」


立花の落ち込んだ顔を見た時、

どうしてか元気づけたいと思った。


でも、冗談で誤魔化しても

何も変わらない。


「でも、安心した。」


「え?何が?」


「エリートさんでも、悩みがあるんだなぁって。」


「エリートさんかぁ…。そんないいもんでもないよ?」


「そうか?」


「うん。そうなの…。」


これ以上は踏み込まないで。

そう言われたような気がした。


でも、それはただの

思い込みかもしれない。


放っておけなかった。


「最近、疲れているのか?」


「….そうだね。周囲の期待ってやつ?なんかプレッシャーに感じちゃって…。」


「だから、"好きなように生きたい" って言っていたのか。」


「そんなところだね。」


——まだ、終わらせたくなかった。


「別にいいだろ。」


「え?」


「期待なんか応えなくてもいいだろ。」


「そんなのダメ!!」


立花が声を大きく荒げた。

その後、少し冷静になったのか

いつものトーンに戻った。


「ごめん。でもダメ。できないの。」


立花は少し苦しそうに話を続けた。


「私ね。孤児院で育ったの。

その中で出来ない人たちを見てきた。


だから、怖い。

自分がもしそうなったらって。」


失望されたくない。

その気持ちは痛いほど分かる。


「それは、辛いな。」


「…え?」


「勝手に期待されて、

期待に応えられなかったら

勝手に失望されるんだろ?」


俺はさらに続けた。


「でも、

立花はその期待に

応え続けてきたんだよな。


普通にすげぇよ。」


少し立花の表情が柔らかくなった。


「….うん。」


「まぁ、俺には無理なんだけどさ。」


「なにそれ。」


立花が少し笑顔になった。

——それだけで、十分だった。


その時だった。

「きゃああああああ!!!」

遠くの方から、異様に低い女性の叫び声と、警報が鳴り響く。


俺と立花は音が鳴る方に視線を向けた。


「…..今の声。」

「事件かもしれない。」

「行こう!」


立花はすぐに駆け出し、俺も後を追った。


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