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私、もしかして世界を作っている?無理だから!と気が付いたのは100年経ってからだった(と思う)  作者: 青井空


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3 異世界を感じたら気絶した

後ろを振り返ると、岩壁。

前を見ると、砂漠と、岩床と……青い空。


さっきまで見ていた、あの圧のある青だ。


広さは、ついこの間行った野球場くらい。

私が立ってる場所は一段高くて、向こうの方に段差が見える。

この場所だけで、たぶん戸建て2軒くらい建てられそう。……いや、建てないけど。


「たぶん」としか言えないのは、頭がガンガンして、立っていられないから。

中腰からしゃがみ込み、今はもう地面にべたっと横になってる。


心臓が、うるさい。

ズキ、ズキ、と脈打つたびに耳の奥まで響いて、

全身がズン……と重くなる。


小説でよくある『ブラックアウト』なんて可愛いものじゃない。

意識はあるのに、力だけ抜けたぬいぐるみ状態だ。


「どこ? どうしよう? なにこれ?」

頭の中はそんな単語がぐるぐるぐるぐる。


そんな私の前に、黒い影が降りてきた。


カラス?

……いや、その時の私は、ただ黒いものを目で追っただけで、何なのか理解してなかったと思う。


その「カラス」は飛び、ヤシの実くらいの白っぽい実を持って戻ってきた。

そして、私の足元にある尖った岩に、バキッ、バキッと何度も打ちつける。

やがて実に穴が開き、嘴を突っ込んで中身を食べ始めた。


(……賢いなぁ、あの子)


そう思った瞬間、少し意識が戻ってきた。

体を起こせるし、空気も肌で感じられる。


そして、唐突にわかった。

ここ、日本じゃない。

……いや、そもそも地球じゃない。


景色は見たことあるようで、全部少しずつ違う。

岩も、空も、水も、知ってる色と形に似てるのに、違う。


空気の味も違った。

澄んでいて冷たくて、少し甘い。

神社の奥のほう、誰もいない場所の空気に似ているけど……もっと深く、肌の内側まで染みこんでくる。


耳の奥では、葉っぱもないのに葉擦れの音がする。

風は軽くて、立ってるだけで足元がふわっと浮きそう。


空を見上げると、やっぱり青い。

でも、その青さは……気持ちよすぎる。

痛いほど澄んでいて、拒否できないくらい強い。

まるで「気持ちいいでしょ?」って無理やり押し付けられてるみたい。


(ああ、やっぱり……ここは地球じゃない)


そう感じた瞬間、心臓がドクンと跳ねた。

生まれて初めて、世界の外に来ちゃったんだ。


指先をぎゅっと握りしめて、もう一度あたりを見渡す。

何もない。誰もいない。


(……どうしよう)


何を考えたらいいのかわからない。

不安か、驚きか、疑問か――

すべてが混じり合って、ぐちゃぐちゃになった思考を、私は受け止めきれなくて。


目に映る画像が、上のほうからパネルが閉じるように暗転し

音も遠くなって――崩れ落ちるように気絶した。




……で、目が覚めた。


気絶後寝たみたい。

よく寝れたな、私……。


でも寝たら、少し気持ちが落ち着いているのがわかる。


「まず衣食住! 寝床チェックして、食べ物探して、服は後で! よし、探検開始!」


声に出してみたら、ちょっとだけ元気も出た気がする。


立ち上がって周囲を見ると、尖った岩のそばに、カラスが食べたらしい白い実の残骸が2つ落ちてた。


「あれ

。どこにあるんだろ……」


尖った岩の向こうに回ると、半円形の段々になった地形が広がっていた。

下の段はキラキラした砂漠みたい。生き物の姿はなし。


「……あ、滝? 川? 池もある! なんか浮いてる!」


水源らしきものを発見して、そっちへ行くことにした。


岩壁の端に下りられる石の階段があって、慎重に慎重に降りる。

一歩間違えば刺さりそうな鋭い岩だらけ。手をつくのも怖い。


10分ほどで滝つぼに到着。

魚はいないっぽい。


「食料ゼロかぁ……」


でも、水は必要。

飲んで毒だったらアウト、飲まなくても脱水でアウト。

つまり――人生の大博打。


覚悟を決めて、ひと口。


……甘い。

澄んでいて、ひんやりして、優しい味がする。

透明な光が血管を走り抜けるみたいで、胸の奥がぎゅっとなって、心臓がドクンと跳ねた。


生きてる。私、生きてる。

それだけで、笑いそうになった。


でもこういうときこそ慎重に。

もう一口飲んでも、やっぱり甘くて、すごく気持ちいい。


「……はは」


死にそうだったはずの私が、異世界で、よくわからない水を飲んで、生き返ってる。

生きてるって、最高。ほんとに。


調子に乗ってたっぷり飲んで、また寝床に戻った。

たったそれだけなのに、心も体もクタクタ。


高ぶった気持ちが落ち着くと、今度は別の何かに背中を押されるみたいに、まぶたが重くなる。

きっと、今日はもう十分がんばったんだ。


そう思って、私はゆっくりと目を閉じた。


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