ためらわないで
たったいま花嫁をもらったばかり
祝杯にあふれだす銀色の波
胸の高鳴り 天まで届くよ
キンと乾杯のグラス勢いよく弾けた
高い丘の上から見渡す瞳
金縛りの魔法かけられて
開け放たれた大地が成長を遂げたかに
空もおおきく広がって
天と地 上下に二枚の巨大なキャンパス
だれのためのアートだろう
キツネにつままれたかな
北風も遠くまで水草をなびかせてる
みんな生きている
くまなく生きている
惑星のはじまりのようなドラマチック
さすらいの息を吹いてくる
雨雲は粒ぞろいで遠きにちぢれゆき
絵の具で描いたようなメタリック
水溜まりがオーロラみたい揺らめいてる
まるで蜃気楼 目の前おおって
幻想的な時間のなか 計り知れるもの
なにひとつ見えないよ どうして
静まり返る 謎めいた空白だれもいないの
夢の景色 時を忘れ ほろ酔い気分で
知らない間に歩き出してる 手を引くだれかと
ふいに突き出した影 頭上をかくした
見上げた空には
苔むした岩場が遥かな天に向かうよ
駆け上がる靴音 目で追いかければ
そっと暗闇に灯りが浮かんだ
どこかで汽笛が聴こえないか
迷い込んだか 誘いこまれたか
いまはふしぎだけど
胸に沸き立つ 衝動おさえきれない
雄大な場面やきついていく
ちいさな動物が身を寄せ合って
たくさん鳴いているふしぎ
おおくの涙が流れて落ちて
歌が聴こえてきた
こみ上げてくる感動にくちびる噛んで
となりを見たら 大丈夫ですかと
ほんのひと時 夢見に堕ちていた
花嫁はその手にちいさな命を抱いて
ここまで連れて来れましたねと
難病だったぼくを見ながら
父につぶやいたんだ




