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「セイさんのレベルを考えるに、おすすめなのはこちらの五点ですね。」
そういってマリーが見せたのは5着の着物。
装備一式になっているようで、羽織や草履もセットになっている。
「性能自体はあまり差はないと思います。」
渡された鑑定証を見て俺は驚いた。
【黒雲の着物セット ☆2】
STR+30 DEF+10 MGR+15 AGI+25
耐久値:100%
セット効果:敵が認識しずらくなる。
製作者:マリー
「え?」
「どうですか?なかなかのものでしょう?」
マリーが自慢気に話すが、それも無理もないほどの性能だった。
鬼神クエストの報酬とはさすがに比べ物にならないが、レア度2でプレイヤーメイドだと考えれば破格の性能だと言っていい。さすがβテスター。
とはいえだ
「なぜ防具なのに防御より筋力や素早さの補正値が高いんだ?というか、普通防具につくものなのか?」
「布装備なら防御以外の補正値が付くことも結構ありますよ。作成に使う素材によって変わりますから。」
「へー。補正値4つなんて初めて見たな。」
「うふふ。そうでしょうそうでしょう。レア度2だとこのくらいが限界ですが、まだまだこんなものではありませんよ。」
たしかに凄い。
普通防具だとDEFやMGRが上がるものだが、防御を捨てている俺にとっては、それ以外が上がるのは正直嬉しい。
着物は防御が低くなるらしいが、それ以外に補正がしっかりあるなら、むしろそっちの方が俺には合っている。
少し悔しいが、マリーの言う通り俺の気持ちは購入へと傾いていた。
「このセット効果ってなんだ?」
「これですか?セットになっているものを全て装備することでオプションが付くようになっています。作成もなかなか難しいんですよ。」
そんなものまであるとは知らなかった。
敵が認識しずらくなるとあり、どの程度効果があるのかは分からないが、なかなかいい効果だと言える。
他の装備も見てみるが、やはり最初のものが一番俺に合っている気がする。
見た目は、基本黒地に裾の方に雲の和風模様が描かれている。
羽織は白だが、黒の模様で埋め尽くされているため全体的に黒でシックなデザインだ。
「これにする。」
「ありがとうございます!」
「やった!理想のモデルゲット!」と喜んでいるマリーを見て苦笑する。
結局こうなったか。いや、いい性能だったから文句はないんだが。
ただ目立つだろうなという心配はあるが、どうせゲームなんだから問題ないだろう。
「値段はもちろん勉強させてもらいますね。10000リルでどうでしょう?」
「10000か。」
俺の現在の所持金は、これまで倒したモンスターのドロップアイテムを売ったため30000ほどある。
あとはギルドのクエストでの報酬金とかで稼いだ。
本当はもっと性能の低いものを革鎧だけ買う予定だったので、予定金額よりオーバーしている。
しかし、この性能でしかもセットを10000で買えるとなるとかなり破格な値段だと言っていい。
本当にサービスしてくれたんだな。
「本当にそんなに安くていいのか?いや、俺もあまり懐事情は良くないから助かるけど。」
「まあわたくしがかなり無理をいって購入してもらうわけですから。それにこれからもご利用していただけるのでしょう?わたくしの専属モデル様?」
「うっ。」
にっこり笑ってこてんと首を傾ける。
これだけ安くするんだから引き受けないとは言わせないと目が語っている。
マリーめ。退路をふさいできやがったな。
「はあ。分かったよ。しっかり宣伝させていただきます。」
お手上げというように両手を上げて降参すると、マリーはそれはそれはいい笑顔になった。
「交渉成立ですわね。」
俺は10000リルを支払うと装備を受けとる。
「せっかくですからここで着てみてくださいな。」
「分かった。」
なんかマリーの目がギラギラしていて怖いが、安くで売ってもらった手前嫌だとも言いづらい。
インベントリから装着を決定すると、瞬時に俺の服装が初期装備の革鎧から先ほど購入した着物へと変わる。
「ふぉぉお!素晴らしい、素晴らしいですわ!さすがわたくしが見込んだモデル。着物がよくお似合いです!」
俺以上に喜んでいるマリーになんだか気恥ずかしいものを感じる。
俺も新しい装備は嬉しいんだが、ここまで大袈裟に喜ばれると俺はどう反応していいのか分からなくなる。
「スクショ!スクショいいですよね!」
「ま、まあそれもモデルの仕事なら」
「やった!」
ついにはスクショの撮影まで始める始末。
色々な角度から何枚も撮られさすがに恥ずかしい。
「もういいか?」
「ふぅー。はい、もう大丈夫です。ご馳走さまでした。」
「そ、そうか。」
改めてマリーの和服に対する情熱を感じた。
和服を着る人が少なくてよっぽど鬱憤が溜まっていたんだろうか。
なんか装備を更新する度にこれを経験しなければならないのかと思うと疲れてくるんだが。
「それで着心地はいかがですか?」
落ち着いたマリーが尋ねてくるが、それは普通最初に聞くことじゃないのか。
まあいいけど。
「そうだな。たしかに思ったよりも軽い。だが、やっぱりズボンに比べると足を動かす範囲が制限されるな。できないわけじゃないけど。」
「そうですね。着物はそこがネックですね。」
「だが、着心地は凄くいいぞ。軽し、涼しいし、布地で柔らかいから動きやすい。見た目も格好いい。目立つけど。」
「うふふ。目立つことは悪いことじゃありませんわ。存分に宣伝してくださいな。」
確かに宣伝を考えれば目立った方がいいのか。
マリーも町中で結構目立ってたしな。
「そうだ。召喚獣につけられる装備ってあるのか?」
「もちろんありますよ。そちらの狐さん用でしょうか?」
話の間ソファーでくつろいでいたコムギが自分のことを話していることに気づいたのかピクピクと耳を反応させてこちらを見る。
「コムギは魔法攻撃主体だから、魔法攻撃上昇とかがあるといいんだが。」
「うーん、そうですね。わたくしは裁縫師ですからスカーフやミサンガといったものが多くなります。魔法系なら宝石を使ったアクセサリーの方がいい効果のものがあると思うんですが。」
「宝石か。ならそっちを探してみるかな。でも宝石のアクセサリーって高そうだな。」
必要だったとはいえ装備を購入して一気にお金がなくなった俺は、残り金額を想像して深いため息をつく。
金はいくらあっても足りんな。
「ドロップアイテムで時々宝石もあったりしますから、素材を持ち込めばお安くなると思いますよ。」
「ま、どちらにしろ今結構懐が寂しいことになってるし、まずは金策からだな。」
「うふふ。貯まったらまた来てくださいね。オーダーメイドも承りますから。」
「し、しばらくはこれで充分だと思う・・・。」
今度は金を搾り取られそうだとマリーの油断ならない笑顔から薄ら寒いものを感じる。
なんか、時々怖いんだよなマリーって。
俺はコムギを再び頭の上に乗せると、マリーとフレンド登録をして店を後にする。
結果時間がかかったな。
予定とは大分違う結果になったが、かなりいい装備を格安で入手できたし上々といったところだろう。
さて。早速この装備の効果を試すためにも、金策のためにもモンスター狩りへと行きますか。
あ、その前に新しい召喚獣も召喚しないとな。
やることはまだまだ沢山だ。




