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コムギを頭に乗せたまま始まりの草原にやってきた。
ここは初心者用の弱いモンスターしかいないので、新しい召喚獣を召喚するのにもってこいの場所だ。
ちなみにコムギを初めて召喚した場所もここなので、なんとなく次の召喚もここを利用しようと考えていた。
休憩用のセーフティエリアにやってくると早速召喚する。
「えーっと、新しい召喚獣の召喚はと・・・」
スキルを選択して召喚の呪文を唱えようとしたのだが
「え?召喚数可能制限?」
召喚士のジョブレベルが上がって召喚可能枠が増えたはずだけど?
俺は慌てて確認すると、どうやら今の俺のレベルでは召喚しておける召喚獣は一体だけらしい。
つまり、新しい召喚獣を召喚するためには、コムギを送還しなければならないようだ。
今調べて知ったのだが、召喚士の使役する召喚獣はパーティー枠を使わないらしい。
その代わり、召喚可能な数が制限されており入れ替えながら戦闘を行う。
レベルが上がれば召喚しておける数も増えるようだが。
一方でテイマー、つまり調教士の使役するテイムモンスターはパーティーメンバーとして扱われるのでパーティー枠を埋める。
代わりに召喚士のように連れ歩く数に制限がないというわけだ。
どちらも一長一短で甲乙つけがたい。
状況によって有利不利はあるだろうが、ソロには調教士の方が合っているように思う。
まあ俺は今はソロだが、幼なじみの二人と遊ぶ約束をしているのでパーティー枠を消費しないのは有難い。
でも今は、コムギと新しい召喚獣を会わせてあげられないということに、楽しみにしていた分ちょっとショックだった。
「あー。えーとコムギ?そのだな、新しい召喚獣を召喚するためにはコムギを送還しないといけないみたいなんだが・・・」
俺が言い切らないうちに、コムギは俺の頭にひしっとしがみついた。反応早いな。
「やっぱり嫌か?お前が嫌なら無理にとは言わない。召喚できる数が2体になるまで待つよ。」
少し考えた様子のコムギはやがてするすると頭から降りてきた。
そして一生懸命手足を動かしてなにかを始めた。
なにかを伝えようとしているのか・・・?
「なんだ?腹が減ったのか?」
そう尋ねるとコムギはぽふっと脛に飛び蹴りをくらわせてきた。
「いたっ!くはないけど、なにするんだよ。」
ゲームなので痛覚は抑えられているから痛くはないが、ピンポイントで脛を狙ってくるところがなんとも意地が悪い。
コムギは伝えたいことが上手く伝えられな状況がもどかしいのか、それとも腹が減ったと思われたことに怒ったのか。どちらかは分からないが、地団駄を踏んで悔しさを表現している。
「召喚獣と話せるようになったらいいんだけどな。」
召喚獣とコミュニケーションをとるために会話できるスキルがあっても良さそうなものだが、今のところ実装されていない。
レベルが上がればあるのかもしれないが。
しかし、一体コムギは俺になにを伝えたいんだ?
食べる仕草に見えたから、俺はてっきり腹が減ったのかと思ったんだが違うようだし。
「・・・あ。もしかして、新しい召喚獣を召喚するために送還してもいいから今度奢れってことか?」
前後での会話と食べる仕草を繋げて考えれば、コムギが伝えたいのはまさにそれなんじゃないかと思える。
ふと思い付いた考えを口にすれば、コムギはその通りだというように、何度も何度も頷いた。
「奢るもなにも、払うのはいつも俺なんだが。」
ついでに言うと、なにもなくても、コムギはいつも好きなものを好きなだけ食っているような気がする。
だが、せっかくコムギが譲歩してくれているんだから、それを言うのは野暮というものだろう。
だから、ちょっと口が滑って余計なことを言ってしまった感じはあるが、あまり気にしないで欲しい。
「分かったよ。今度お礼にスイーツの食べ歩きをしよう。」
苦笑しながらそういうと、コムギは嬉しそうにピョンピョンと跳び跳ねて感情を表現した。
なんだかコムギに一本とられたような気がするが、まあ嬉しそうなのでよしとしよう。
それまでにどうにかして、コムギが満足するまで食べられるくらいには金を貯めないと。まさか装備でもアイテムでもなく、食事代で金策することになるとは思わなかったが。
所持金の大半が食事代に消えていっているような気がするのは俺の気のせいか?
「じゃあまたな。早くレベルを上げて新しい召喚獣と一緒に食事をしよう。」
コクりと頷いたコムギは送還されていった。
それを物悲しい思いで見つめていた俺は、何となくコムギに対して申し訳ない気持ちになる。
AIに対して感情移入のしすぎではないかと思われるかもしれないが、コムギの仕草を見ているとそこに感情があるような気がしてならない。
そしてそれは、この世界の住人全てに言えることだった。それだけリアルな世界を作れるんだから、今の技術は凄いな。
今度は同時召喚ができるようになるまで新しい召喚獣は控えた方がいいかもしれない。
やっぱりせっかくだから、一緒に冒険したい気持ちがあるから。
「全く。コムギを送還したくらいで女々しいな。もう会えなくなるわけでもあるまいし。俺ってこんなやつだったか?」
はあ。と小さくため息をついた俺は思考を切り替えるために頬をパチンと叩く。
・・・衝撃はあるのに痛くないな。まさか痛覚を抑える機能にこんな弊害があったとは。
「さて。早く召喚してレベル上げに行かねば。新しい装備も試したいし。」
以前コムギを初めて召喚したときのようにスキルを選択する。
うん。ちゃんと召喚可能になってるな。
「『サモン・モンスター』。」
目の前に輝く魔方陣が現れ、目を開けられないほどの眩しい光を発する。
やがて光が収まり魔方陣の上に立っていたのは
「え?子供?」
鮮やかなライトグリーンの髪に眠たそうな深緑の瞳。将来絶対美人になりそうな可愛らしい幼い顔立ち。
頭にアホ毛っぽい葉っぱがなければ、普通の幼女にしか見えなかった。
「えっと。モンスター、なんだよな?」
モンスターが出てくると思ったのに人が、しかも幼女が現れたことに少し困惑する。
たぶん、人型のモンスターだとは思うんだが、あまりにも人そのものというか、モンスター要素がないので驚いてしまった。
幼女はなにを考えているのか分からないようなぼーっとした表情で俺を見ている。
召喚者である俺を観察しているんだろうか?それとも単に眠いだけ?
コムギの時はテンションが高かったから絡みやすかったけど、こうもリアクションがないとどう接すればいいのか分からないな。
しかも相手は見た目幼女なので、無遠慮に触るのも躊躇われる。一歩間違えれば犯罪者だからな!
「あー。とりあえずステータスを見てもいいか?」
そう尋ねれば話は聞いてくれているようでコクりと頷いた。
ううむ。調子狂うな。
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名前:
種族:樹精 Lv1
HP:90
MP:100
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なるほど。精霊なのか。だから人に近い姿をしていたんだな。
ラノベとかでも精霊って人型のものが多いし。
ステータスはHPもMPもそこまで差はない。
MPが多かった魔法タイプのコムギに対して、樹精はどちらもできるオールラウンダーなのかもしれない。
お次はスキルだ。
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スキル
【土魔法】【樹魔法】
【大地の恵み】【鞭術】
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「鞭術・・・。」
いや、コムギよりスキルが多いなーとか、魔法2つも持ってるのかーとか他にも色々気になるところはあるけど、鞭術のインパクトが大きすぎてちょっと。
樹の蔦とかで殴るんだろうか。
そんなことを考えていると、樹精がちょんちょんと裾を引っ張ってきた。
「あ、えっと。お前凄いな。スキルも4つもあるし、物理も魔法も出来そうだし。」
偉い偉いと頭を撫でると、無表情だった顔がほんの少し口元が緩んでなんとなく嬉しそうだ。
俺の対応は間違っていなかったらしい。妹がいたらこんな感じなのかもしれないな。
「よし。じゃあ名前も決めるか。」
名前はなんにするか。コムギの時は2つの候補で悩んで、最終的にコムギ自身に決めてもらったんだよな。
ちなみにコムギの名前の由来は、その毛並みの色からだった。
進化して毛並みが変わるとちょっと名前が合わなくなってしまうかもしれないが。
まあ、あの時みたいに見た目から連想するのはありだよな。
樹精を観察すると、ピョコンとついた頭の葉っぱがよく目に入る。
「そうだな。お前の名前はコノハだ。」
うん。女の子っぽい名前だし、樹精という種族にも結構合ってるんじゃないか?
ちょっと自信を持って名前をつけると、樹精改めコノハは了承したようにコクりと頷いた。




