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ペコとかまどのオカルトごはん!  作者: GOZOROPS
5皿目:デザート《妖精たちのティーパーティー》
50/55

決着!

50話目です。感想、ブクマ、評価などいつも感謝しております~

 エドガーはティターニアの足元に目をやった。


 広場で最大の光源となっているため分かりにくいが、妖精女王が陣取って指揮を執る石の門、その靄の中から次々と妖精たちが湧いて出ているのが確かに見て取れた。靄の向こうには恐らく妖精の世界があるのだろう。


「お姉さん! 門を壊せって伝えて!」


 エドガーはパーカーのフードを脱いでマイペースに料理をしているかまどの袖を掴む。彼女はたき火を弄りながら、サンドウィッチのパンにマスタードを塗っていた。さっきの生地はもう形成されて石窯で焼かれているらしい。


『あぁ、ごめん。あたし英語わかんないんだよねぇ』


 かまどは困った表情でエドガーの知らない言語を話す。英語ともスペイン語ともフランス語とも違う。エドガーの耳には馴染みのない言葉だ。


 アジア圏の言語も勉強しておけばよかったとエドガーは悔やむ。講義はあったのに遠い土地の話だからと受けていなかった。


 エドガーのアドバイスは届かない。どうすればいい。どうすればこの二人に門のことを伝えられる。


 いくらペコが強くても、無数の妖精に襲われればいつか力尽きてしまうのではないか。視界を埋め尽くす嵐のような妖精の群。火炎放射器でもない限り、一網打尽にするのは難しい。


 そう、数は最大の暴力なのである。


「門よ! 門!」


 エリザベスが持っていたヘラで門の方を指し示す。かまども門を指さし『あれ?』などとエリザベスに確認を取る。


 言葉はコミュニケーションの一手段でしかない。通じ合えないなら別の手段で伝えればいいのだ。エドガーは頭でっかちな自分を恥じた。


『ペコ! あの門が巣ってことっぽい!』


『そうなの? じゃあ壊してテーブルにしよ!』


 かまどの指示を受けたペコは地面を踏みしめて空高く跳び上がった。彼女の立っていた場所が軽く陥没し、ロケットのように打ち出されたペコ自身の威力によって妖精たちのドームが破壊される。


 数の暴力に対抗する範囲攻撃。ペコの挙動によって空気が振動し、衝撃波となって妖精たちに襲い掛かった。


「奴を墜とせッ! 全隊出撃ッ!」


 空高く舞い上がったペコに向かって妖精の群が一丸となって迎撃に向かう。月の光を背中に浴びて特大の笑顔を浮かべたペコは、妖精の門に向かって落下を始めた。


「そんなことが……可能なのか」


 エドガーは思わず目を見張る。


 ペコは右足を垂直に振り上げ、両手で押さえて溜めを作った体勢で降ってくる。それに対して、光り輝く妖精の渦はとぐろを巻き、高速で回転しながら上昇する。


 隕石と竜巻がまさに正面から衝突する、決着の刻。


「迎撃せよぉぉぉ!」


 妖精女王の雄叫びに空気が震える。狂気を宿した一筋の肉色の弾丸と光の嵐が、森の木々よりも高い場所で正面からぶつかった。


 破壊的な衝撃波が木々を揺らし、妖精の泉に荒ぶる波を立てた。光が空に弾け、巨大な流星群を作り出す。


 たき火は大いに揺らぎ、エドガーとエリザベスは飛ばされないように手を繋いで地面に張り付く。メレンゲの入ったボウルは辛うじて、エリザベスのお腹の下で転覆を免れた。


 かまどを見れば、彼女も手ごろな岩に掴まって空を見上げていた。


「……なんて、綺麗な」


 暗い森のあちこちに妖精たちが光条を引きながら墜落する。衝突地点を中心に放射状に広がった光の束、その形状はまるで翼を広げた巨大な天使のようだった。


 その上方、衝突の衝撃で天に舞い戻り、再びティターニアに向かって満面の笑みで落下してくるのはペコである。


 全力で放った部下の妖精たちが一撃でまとめて撃墜されたことの衝撃と、光の翼を背負ったペコがあまりにも美しいことの感激で、ティターニアに一瞬の隙が生じる。


 妖精の門からの増援はとてもじゃないが間に合わない。


「はっ――」


 我に返ったティターニアは六枚の翼を広げ、高速落下してくるペコを避けようとするが、遅かった。


 次の瞬間、ペコのかかと落としが妖精の門に直撃した。分厚い石の門はティターニアと一緒にへし折れ、真ん中から粉々に砕けた。


 地面まで達したペコの一撃はその場に浅いクレーターを作る。上空へと舞い上がった土煙があたりにもうもうと立ち込めた。


『お腹ペコペコだよぉ』


 土煙の中から光り輝くペコが現れる。彼女はぺしゃんこになった妖精女王ティターニアを無造作に掴んでいた。何事もなかったかのような彼女の姿は、恐ろしいを通り越してもはや滑稽だった。


 この世界には人知の及ばぬ者が存在する。エドガーはなんだか可笑しくなって笑ってしまった。


『ペコ』


『んっ』


 かまどは人の頭ほどもあるガラス瓶を地面に置くと、ペコからティターニアを受け取った。そのツーカーな関係は熟年した夫婦のようで、エドガーは少しだけ羨ましく思った。


『こうすると……はい』


 かまどはティターニアの羽のつけ根を包丁で切り、頭部を落とした。すると、ティターニアは砂のように粉々に砕け、サラサラとガラス瓶の中に零れ落ちた。


 妖精の女王は月光の蜜を固めて作った砂糖となり、極上の甘い香りを周囲に振りまいた。


 ペコに落とされた妖精たちは時間と共に様々な種類の花へと姿を変えていた。回収が間に合わなかった幾万もの妖精のおかげで、剥き出しの砂地だった広場は今やお花畑だ。太陽が昇れば、豊かな色彩が顔を覗かせることだろう。


 かまどは包丁をくるりと回し、パーカーを脱いだ。


『それじゃ、お料理タイムといきますか』

また来週~

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