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ペコとかまどのオカルトごはん!  作者: GOZOROPS
4皿目:サラダ《新鮮ヘアサラダ ~呪いと思い出を添えて~》
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踊り食い

みなさんは髪の毛を食べるとお腹を壊しますのでご注意~

 日本人形の髪の踊り食い。

 

 ペコは私の髪の毛を千切ってもしゃもしゃと食べる。キャベツやレタスを手で細かくするみたいに簡単に。


 私が次々髪を伸ばしても、ペコはものともしないで食べるのよ。


「よく噛みなさい!」


 かまどに怒られるペコ。私のことなんて眼中になしよ。


『お蕎麦みたいにツルツルいくなバカ!』


 だいたい髪の毛って人体じゃ消化できないんじゃないの。なによ、呪いの力がこもったら美味になっちゃうとでも言うの。


 それともペコは人型なだけで人類じゃないのかしら。


「かまど~、飽きるよこれ」


「ん……じゃあ、これはどう?」


 かまどが次にバッグから取り出したのは瓶に入った自家製っぽい和風ドレッシング。玉ねぎの風味が美味しいのよねぇ……って、ドレッシング?


『まさかあなたたち……』


「わぁい、味変!」


 ペコは引きちぎった髪の束に和風ドレッシングをドバドバかける。ギトギトになった私の髪。玉ねぎの破片なんかもくっついているわ。


『そんな添加物だらけの油はやめて! 椿油を使いなさい!』


 ついつい脳内ツッコミを発信しちゃうくらいに動転しちゃっている私。二人にとって私は脅威ではなく食糧。


『でも……窮鼠猫を噛むって言うでしょう!』


 私は髪をさらに伸ばして大きな塊を作ったわ。さながら巨人の拳。天井付近まで上昇してペコに向かってそいつを振り下ろしたの。


 ペコはその漆黒の巨塊に向かって拳を突き上げる。


「ブロッコリーみたい!」


 両者がぶつかり合って、崩壊してしまったのは私の髪。


 結合が解かれて数百万本がバラバラになってしまったわ。


 ペコは自身の周囲に弾かれた髪を回し蹴りで一閃してカットする。


 私の髪は食べやすいサイズに切り揃えられ、あとはドレッシングを振りかけられてたちまち平らげられてしまうのよ。


『まだまだよ!』


 それでも私はめげずに攻める。


 頭上がダメなら正面から平行に、または左右から挟み込んで、ついでに足元を狙ってみたり、塊にさせず散開させて、あるいはねじって鋭い突きで。私はやれるだけの攻撃を試してみたわ。


「すごーい! ぜんぶ食感が違う!」


 ペコはそのすべてを迎撃しては食べていく。けれどその一口の大きさには限界があると私は気付いたわ。


 攻撃は効かないけれど、食べる早さはどうかしら。


 私は考え方を変える。


 ペコの周囲を取り囲むように髪の毛を伸ばしていって、可能な限り同時にペコに食べさせてやるの。


 やがてペコが私の髪の増殖についていけなくなったら、結集して一撃見舞えばいいのよ。


『これでどうよ!』


 私はペコに向けていた髪を本堂全体に拡散して放ったわ。


 それはもはや漆黒の海、髪の毛の森。ペコを全方位から包み込んだ髪の毛の包囲網。


 いくら食べるのが早くても、絶え間ない全方位同時攻撃を文字通り食らったらどうかしら。


「むっ! むむむっ! むむぅ!」


 そこからペコのペースは徐々に落ちてきたわ。一口の大きさは変わらないけれど、明らかに咀嚼ペースが落ちてきた。


 この調子でいけば私の勝ちよ。


『ほらほらほらぁ! もっと食べなさいよ! 胃袋の限界までねぇ!』


 私は髪をどんどん伸ばす。ペコも健闘するけれど、私の増毛速度には追いつけない。


 押し合うこと五分、ついにドレッシングも切れて、ペコが根をあげたの。


「もう食べられないよ~」


 私の髪の海に溺れるペコ。


 その狂気の桜色が私の黒に埋まっていく。


 さすがにもう食べきれないようね。


 それでもあなたはよく食べたわ。サラダ百人前は軽くいったんじゃないかしら。


『よく食べたわね。賞讃に値す――』


「次のドレッシングにしよっか」


「やったぁー!」


『――えっ?』


 かまどが取り出したのは青じそドレッシング。独特の風味とさっぱりした後味が人気の一品。


『なっ……なんですって……』


 ドレッシングを変えたペコはまた初めのペースを取り戻したの。


 いいえ、もっとハイペースかもしれないわ。味に飽きていただけで、限界というわけではなかったようね。


 まったく、何という化け物なのかしら。


 私の髪は増えるよりも早く刈られていく。


 青じそはどうやら私の髪と相性抜群らしいわ。ちくしょうめ。青じそをここまで恨むことになるとは思わなかった。


 だけど私だって負けちゃいられない。何百年髪を伸ばしてきたと思っているのよ。


『でも、さすがにいつか限界が来るでしょ!』


 ペコは髪の海に呑まれながら旺盛に食べる。青じそドレッシングをめんつゆみたいに使って、私の髪を吸い込んでいくわ。


 食感に飽きたら細かく刻んだり、一気に飲み込んでバリバリと噛んだり、手で揉んでほぐしたり、美味しさに妥協しないで平らげていくの。


「かまどォ! ドレッシング!」


 勝負は完全に持久戦になったわ。


 本堂の隅っこで戦いを見守る青藍様とかまどだけど、ペコがドレッシングを所望するとかまどが鞄から取り出して投げてよこすの。


 もちろん私はそれを髪で弾こうとするのだけれど、かまどの包丁が光ってペコまでの道を切り開くのね。


 やっぱり髪の毛は刃物には弱いわ。それにかまどったら、どんなに太い髪の毛でも一閃で断っちゃうのよ。


 私とかまどの相性は最悪。

 

 けれど彼女は戦いに参加しようというそぶりは見せないわ。あくまでペコのサポートなのね。


 きっと、ペコほど身体能力が高くないの。確かにヤバい眼と包丁の技術を持ってはいるけれど、基本的にかまどは普通の人間なのよ。


 私もだから、彼女を襲うことはない。青藍様も隣にいるし、嫌われたくはないもの。


 かまどが青じそに続いてペコに渡したのは塩ダレドレッシング。


 酢がベースとなっていて塩味が酸味と良いコンビネーションを生んでいる傑作ね。ペコとかまどの抜群の関係性を象徴しているみたいな、シンプルかつ味わい深いドレッシング。


 かつて私のご主人様も愛用していたから知っているの。作るのも簡単だし、何にでも合うのだそうよ。


 ご主人様。


 そうよ、私だってずっとお寺にいた訳じゃないの。私がここに辿り着くまでには色々なことがあったわ。


 良いことから悪いことまで本当にたくさん。


 私は来るべくしてこのお寺にやって来たのよ。運命に身を任せたその末に青藍様と出会ったの。源流で湧いた水がやがて大河となって最後に海へと注ぐように、湧いて流れて漂ってきた私にとってはここが最後の海なのよ。


また明日~

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