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ペコとかまどのオカルトごはん!  作者: GOZOROPS
3皿目:肉料理《????の縺セ繧九井縺イ辟氵》
32/55

ペコとかまど

名づけ

《part 10》


「名前といえば、あんた、名前は? 何ていうの?」


 そう。なんだか変な経緯で食卓を囲っているけれど、あたしたちはまだお互いの呼び名すら知らない間柄なのだった。


 いや別に名前を知ったからどうということもないけども……名前も知らないのはそれはそれで不便だし……。


「名前? あたしの?」


 誰にともなく言い訳するあたしの気も知らず、彼女はまたきょとんとしながら首を傾げ、


「知らない。あたし、名前とか呼ばれたことないもん」


 と、そんなことを言い放ったのだった。


 思いもよらない大暴投にあたしの言語野もフリーズ状態。


「え? 無いの? 名前」


「分かんない。あたしは知らない」


 知らないって、あんた自分の名前でしょうに……思わず額を押さえるあたし。


 しかし彼女は机にバンッ! と手をついて笑顔で身を乗り出してくる。


「ねぇ! あたしの名前つけてよ!」


「え?! つけるって、あたしが?」


「そう! いいでしょ? りょうりの名前とかいっぱい知ってるんだし!」


 何だそりゃ。藪から現れた蛇はあたしにも捌ききれず、さりとてこんな瞳を向けられてしまっては無下にも断れない。


 あたしは引きつった表情を貼り付けて、しばらく笑顔の圧力に対峙していた。


 ……のだが、根比べではまるで勝ち目がないと察して溜息の白旗を掲げた。


「……それじゃ、ペコで」


「ペコ?」


「そう。あんた腹ペコみたいだし」


 投げやりのお手本みたいな命名だけど、彼女自身はどうやらそれでいいらしい。「ペコ、ペコ……」と確かめるように呟いて、輝度三百パーセントの笑顔で飛び跳ねた。


「うん! ペコ、いいね! あたし、ペコ!」


「こら、食事中に暴れない」


「あたしはペコで、あなたは? あなたは何て名前?」


 適当に付けた名前を誇らしげに名乗られるのは、罪悪感というか、こそばゆい感じが拭えない。


 彼女――ペコの笑顔を直視できなくて、あたしは机の皿に視線を落としながら答えた。


「……御厨かまど。かまどでいいよ」


「かまど! そっか、あなた、かまどって言うんだね」


「意味なく呼ばないでよ。ハズい」


 あたしの抗議も虚しく、ペコはウシガエルの唐揚げをかじりつつ「かっまどっのりょっおりっはおっいしっいなー」なんて変な歌を披露している。やめろ。マジでやめろ。


「かまど、これからもよろしくね」


 突然ペコがそんなことを言った。


 意味を問いただすより先に、彼女の意識はウシガエルとワカメの酢の物へと移っている。


 あれだけ大量に並べられていた肉料理は、今やすっかり平らげられてしまっていた。


 ……こりゃ聞いても無駄か。


 あたしは何度めかの溜息をつきながら、これから有り物で作れそうな料理の段取りを考え始めたのだった。


20時にもう1話投稿します~

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