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ペコとかまどのオカルトごはん!  作者: GOZOROPS
3皿目:肉料理《????の縺セ繧九井縺イ辟氵》
29/55

自宅にて

かまどのやり方

《part7》


 気がついたらあたしは自宅の厨房に立っていた。


 合計六口、ちょっとした料理店並のコンロには各々鍋やフライパンが乗っている。


 既に盛り付けは終わったらしく、残っているのはソースやスープ、油だけだ。広い流し台には無数の調理器具――我が家の装備フル稼働で料理していたらしい。


 あたしは小皿に盛られたウシガエルの脚の唐揚げを持ったまま、予熱で弾ける油の前で呆然と佇んでいた。


 ――またか。


 霞がかかったような頭で呟いた。


 料理欲が爆発した後は寝起きみたいに脳みそが働かなくなる。体の芯にわだかまる倦怠感は飽き飽きするほど繰り返してきたいつもの感覚だけど、今日は不思議と、後悔まじりのうしろめたさが軽くて気分が良かった。


 何にせよ作ったものを食べてしまおう……今日はあたししか居ないし。


 母さんは今日も遅くまで収録で、父さんは三ヶ月前からアフリカのナントカ共和国で現地調査。


 自分で作ったものを自分で消費する生活に今更思うところもない。


 厳重な鍵がついた扉を開けるとダイニングに直通で、中央に鎮座するのは大食堂みたいな規模のテーブルだ。


 所狭しと並べられた無数の皿は全て美味しそうな料理に満たされている。


 陳列されたどれも湯気や匂いで食欲をそそってくるけれど、その総量はざっと数えて大皿十枚超……これ一人で食べれるの?


 やりすぎな自分の無意識に溜息をついて、食卓から視線を上げる。


「ねぇ、まだ食べちゃダメ?」


 そこに女の子が座っていて、あたしは危うく唐揚げを落としそうになった。


 彼女だ。白い物体に襲われかけていたときに現れた、あの少女がテーブルについている。


 ピンクのボサボサ髪はそのまま、机に肘をつきながら口を尖らせて不満を表明中。その顔を眺めていたら次第に、朦朧としていたときの記憶が蘇ってきた。


 彼女のつまみ食い(?)をやめさせたあたしは、動きを止めた白い物体を家に運び込ませて、その肉(?)をひたすら料理していたのだった。


 その成果が今、あたしたちの前に並んでいる。


 いや、あの白い物体は生き物なのかすら定かでなかったし、現に目の前の皿に乗っているのは表面も内部も真っ白でおよそ普通の肉には似つかない代物だ。


 でも浮かんできた【調理法】は多くが肉料理に準ずるものだから、これも肉の仲間……だと思う。多分。


 何にせよ、ずいぶんお預けを食わせていたらしいことは、真っ暗な窓の外や壁の時計を見れば察しがつく。


 巨大な皿の合間にウシガエルの唐揚げを置きながら、早くも目移りしている少女に謝意の笑顔を向けた。


「待たせてごめんね。もういいよ」


「やった! おいしそ」


「コラ」


 近い皿に向かって伸びた彼女の手を反射的にはたいてしまった。途端に蹴り飛ばされた子犬みたいな哀れっぽい表情を向けてくる彼女……罪悪感がヤバい。


「なんで? 食べていいって言ったじゃん」


 早くも両目がうるうるしてやがる。


「手掴みは無いでしょ。ほら、フォークも箸も用意したんだから」


 言いながらフォークとナイフを握らせるが、彼女はいまいちピンと来ていない様子で首を傾げていた。


 ……うーん、まぁ見た目から少しは覚悟していたけど、こやつマジモンの野蛮人か。いや登場シーンから野蛮ではあったけど。


「とりあえずあたしのやり方見て覚えて」と伝えながら彼女の向かいに座った。


「それともう一つ。食べる前には『いただきます』を言うこと」


「いただきます? なにそれ?」


「これから食べるものに対する感謝の気持ちだよ」


 正面の顔は相変わらずきょとんとしていたが構わない。


 あたしの料理を食べるときは『いただきます』と『ごちそうさま』が必須。


 これはマナーと言うよりルールみたいなものだ。


 もちろん両親の躾があたしの体に染み付いているというのが一番の理由ではある。


 だけどその一方で、たった六音節ずつの何気ない挨拶はあたしにとってある種のけじめなのだ。


 あたしが勝手に【食材】だと思ったものを、勝手に料理して食べる。一連の行動は全てあたしの身勝手だ。


 人間は食べなければ生きられない。でも生きるだけなら最低限の栄養さえ摂れれば同じだし、味や食感を追求する意味なんて無い。


 なのにわざわざ食材としての可能性を探し求め、趣向を凝らして料理する、身勝手さ。

 

 それはきっと食文化という概念そのものに付随する罪深さなのだと思う。


 といっても料理をやめる気は無いし、やめるべきだとも思わない。


 許されるとか許されないとかそういう話でもなく、あたしたちが抱え続けていく呪いのようなものだと思っている。


 しかし同時に、この罪深さを当然のものと切り捨てて、感覚を麻痺させて生きていってもいけない。あたしの包丁やすりこぎや菜箸から伝わる感覚がそう訴えかけてくる。


 ……だからあたしは、この言葉を口にするのだ。


 あたしが背負った、料理という業を忘れないために。


 一緒に食べる他人にも言わせるのはエゴと言えばそうだけど、そこは料理人の矜持と表現させてほしい。


 ……とか言って実のところ、あたしの料理を食べるのなんて自分か家族しかいないんだけどね。たはは。


 あたしが掌を合わせると、少女はナイフとフォークを持ったまま握り拳をコツンと合わせた。うーん……まぁ細かい形式はこの際スルーでいっか。気持ちが大事。


 彼女の目を見る――せわしなく机の上を行き来していたつぶらな瞳が、あたしを捉えて動きを止めた。


「それじゃ、行くよ。せーのっ」



「「いただきます!」」

また明日~

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