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ペコとかまどのオカルトごはん!  作者: GOZOROPS
2皿目:魚料理《スカイフィッシュ・タコスと釜揚げスカイフィッシュ》
17/55

調理開始!

スカイフィッシュのおすすめレシピ

《part 4》


 まずはタコスの立役者、サルサソースを作っていく。


 今回作るのはサルサ・クルダ。キューブ上に切ったトマトと、みじん切りにした玉ねぎ・ニンニク・ハラペーニョ・コリアンダーの葉を混ぜ、ライムの果汁と塩で味を調えたシンプルなサルサである。赤白緑の色彩はメキシコ国旗の色なので、メキシコソース(サルサ・メヒカーナ)とも呼ばれている。


 サルサのボウルにラップを掛けて、いよいよスカイフィッシュの処理だ。切り身にしたスカイフィッシュの揚げ物が今回のタコスの中心になる。


 まず尾に近い肛門を探し当て、そこから鋏を入れていく。刃は筋に沿って真っ直ぐ頭まで通り、見事な腹開きの状態になった。掻き取った内臓を茂みに捨ててペットボトルの水で洗い流す。これでワタ抜きは完了だ。


 締めに使ったナイフで頭を落とす。おどろおどろしい見た目の歯は思った通り硬くて食べられそうにない。背骨は見当たらないので三枚卸しの必要はなし。鰭部分と合わせて食べやすい大きさに切り分けたら、キッチンペーパーで水気を取って塩コショウで軽く下味をつける。


 続いて衣の準備をしていく。小麦粉に二倍量の水を加えてダマにならないよう溶くだけ……でもいいのだが、かまどはカバンから瓶を取り出して中の粉を衣生地に振りかけた。


 ――チリパウダーだ。


 チリパウダーは粉末唐辛子にクミン・オレガノ・パプリカといったスパイスを混ぜた、いわば七味唐辛子のような調味料である。アメリカ南部からメキシコにかけて広く使われており、果物やアイスクリームにまで掛けるほどメキシコの食生活に深く根付いている。


 そんなチリパウダーを隠し味に仕込み、衣生地も出来上がった。


 ちらりとアントニオの方を振り返り、彼を視界に入れないようにしつつ様子を窺う。どうやら生地もこね終わり、渡していたバーナーとフライパンで焼く段階に入っているようだった。これならもう揚げ始めても問題ないだろう。


 揚げたてのフライと焼きたてのトルティーヤ……考えるだけでよだれが湧いてきて、これじゃペコを笑えないなと苦笑する。


 バーナー(二基目)を組み立てて、フライパンに五ミリほど油を張って加熱する。かさばるフライヤーの用意は無い上に油の持ち合わせも多くないので、フライパンで揚げ焼きにしていくというわけだ。


 十分に熱したら衣に切り身をくぐらせ、油の中に並べていく。ジュワッと泡立つ油が適温のサイン。衣が固まるまで触らずに待つ。


 表面の色が変わってきたらひっくり返し、弱火で更に焼いていく。仕上げにもう一度火を強め、水分を飛ばしてベタつきを抑えれば――具材の主役、スカイフィッシュフライの完成である。


「これがホントのフライングロッド、ナリね」


 トルティーヤを持ってきたアントニオがドヤ顔で言った。


 ……このオッサンは本当にメキシコ人なのだろうか? 決してそちらを見ないままかまどが大きく溜息をつき、その間にも彼女の手は休みなく揚げ焼きを繰り返していく。


「美味しそうな匂い!!」


 やがて狩猟の旅から帰還したペコが目を輝かせて叫んだ。かまどの方は、フライを一通り片付けてキャベツを千切り中だった。


「おかえり。大漁みたいだね」


 ペコの腰で暴れる魚籠と、いっぱいに膨らんだ網を見てかまどが労った。ペコは大きく頷いて胸を張る。


「おっきいやつ一匹と、ちっちゃいのがいっぱい!」


 網の口を絞って押さえながら嬉しそうに報告。大型犬にそっくりだ。「よしよし、えらいえらい」と雑に褒めたかまどは、激しい動きが止まらない魚籠を受け取り、蓋を薄く開けて中を確かめた。


「……え、でっか」


 思わず引き気味の声が出るのも仕方ない。籠の中では先程の倍以上の体躯をした棒状生物がとぐろを巻いて、ギィギィ不快な声を立ていたのだ。光を察知して丸い口を押し付けてくる……押し返しながら蓋を閉める。


「これはちょっと後で……。先そっち貸して」


 スカイフィッシュ(大)入りの魚籠をわきに避けて、かまどはペコから網を引き受ける。目の細かい網の向こう側には体長二センチ前後のスカイフィッシュが無数に捕らわれていて、朧気な残像を残しながら飛び交い、網に歯を立ててピィピィ鳴き、速力を失って底の方で絡まりあっていた。


「ミルワームみたいだよね~。うねうねぐちゃぐちゃしてて」


 お気楽な笑顔で食欲が失せそうなことを言うペコ。


「確かに。そういう調理法もありかな……」


 一切たじろがないで考えにふけるかまど。アフリカを始めとした昆虫料理のレシピも彼女の脳内にインストールされている。


「ちょっと……あまり嫌なこと言わないでほしいナリ」


 眉をひそめながらアントニオが言って、


芋虫(グサノ)フライはお婆ちゃんが散々作ってたから飽き飽きナリよ。それに貧乏くさいナリ」


 そう付け加えた。昆虫食はアステカ文明から続くメキシコの伝統――今でもそれは受け継がれているが、貧困層の食事というイメージも強く複雑な立場にあるのだ。地球の食文化はかくも多様なのである。


 方針を決めたかまどが片手でカバンを漁り始めた。


「二人とも、タコス食べてていいですよ。冷めちゃうし」


「えー、かまどは?」


「あたしは先にこっち。やらないと気持ち悪いから」


「むぅ……」


 何か言いたげなペコではあったが結局言葉にならず、口を尖らせたままフライとキャベツを持って去っていった。「巻くのはワガハイやるナリ」と言いながらアントニオが続く。かまどはようやく目当てのものを見つけて立ち上がった。


また明日~

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