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こちら、駒桜高校将棋部Outsiders  作者: 稲葉孝太郎
第60局 文化祭(2015年9月27日日曜)
701/706

689手目 お客様な文化祭

※ここからは、香子きょうこちゃん視点です。

 今日は駒桜こまざくら市立いちりつ高校の文化祭。

 3年生のクラスは出店義務がないから、気分転換に登校。

 まずは、将棋部の出店へ──お、クレープ屋さんか。

 福留ふくどめさんが、教室の窓から営業をしていた。

「クレープ、いかがですか~……あ、裏見うらみ先輩ッ!」

 私に気づいた福留さんは、メニュー表を見せてきた。

「ささ、どうぞ」

 いきなり買わせるんかーい。

「んー……普通のクレープね。400円は、ちょっと高くない?」

「生地に将棋の駒が描いてあるんですよ」

 ほほぉ……って、べつにそれでプレミアはつかないでしょ。

 とはいえ、義理で買うパターンではある。

「じゃあ、こっちのチョコクレープで」

「まいど」

 福留さんは、近くにあった機械をスマホで操作した。

 銀色の箱で、下のところに吐き出し口があった。

 スーッと静かな音がしたあと、クレープが出てきた。

「すごい、こんなのあるんだ」

飛瀬とびせ先輩が持ってきてくれたんです。ザ・クレープマシーン」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

「それ、食べてもだいじょうぶなのよね?」

「今のところ食中毒は出てませんッ!」

 いや、そういう問題じゃなくてですね、はい。

 私と福留さんが押し問答をしていると、うしろから他校の生徒たちが来た。

「ここのクレープ、すっごく美味しいらしいよ」

 え? そうなの?

 どうやら人気店らしく、だんだんひとが並び始めた。

 福留さんは、

「はい、お客さん、会計ッ!」

 と言って、400円を要求してきた。

 ぐぅ、支払いますか。

 私は財布から100円玉を4枚取り出して、支払いを終えた。

 列から離れて、食べてみる──ん、美味しい。

 濃厚なクリームで、生地もふんわりとしていた。

 ただ、ちょっと気になるところがあった。

 クリームの味が、ミルクっぽくないのだ。

 すくなくとも、牛乳ではないような気がした。もっと濃い。

 ひつじとか?

 ま、いっか。なかなかいい買い物をした。

 ぺろりと食べた私は、一回手を洗って、あちこちを見てまわった。

 輪投げ、お化け屋敷、喫茶店……ん? UFOキャッチャー?

 ちょっと変わってる。

 教室を覗き込むと──なにこれ?

 UFOキャッチャーの台はなくて、ガランとした教室だった。

 椅子も机も、片づけられたらしい。

 入り口の近くに、ぽつんと受付があった。

 男子が座って、お金を数えている。

 えーと……どういうことなんですかね?

 私がきょろきょろしていると、受付の男子は、

「ワンプレイ、300円です」

 と言ってきた。

「……なにもなくない?」

「VRなんですよ」

 男子はそう言って、手元のリモコンを操作した。

 あたりがいきなり暗くなって、宇宙空間へ飛んだ。

 驚いた私をよそに、頭上からUFO(?)がふらふらと降りてきた。

「これを銃で撃ってください」

 私は、モデルガンみたいなものを渡された。

「えーと……プレイしたら、なにかあるの?」

「撃墜数に応じて、商品がもらえます。1分以内に30機落とすと、天典堂てんてんどうのクイッチがもらえます」

 ほほぉ、試しにやってみますか。

 ここまで凝った出し物は、なかなかない。

 レッツ・チャレンジ。

「それじゃ、スタートしまーす」

 軽快なBGMが鳴って、UFOが登場──って、速過ぎぃ!

 ビュンビュン飛び回ってて、全然当たらない。

 やたらめったら撃ちまくったけど、そのうちタイムアップになった。

「はーい、そこまでです」

 空中に、光の文字が浮かび上がる。


 5 HIT


 す、少ない。

「駄菓子になりまーす」

 300円払って駄菓子かーい。

 私は嘆息しつつ、スティック状の駄菓子を受け取った。

 塩っけのある味。

 廊下へ出て、お口直しに食べていると、声をかけられた。

 飛瀬さんだった。

「あ……ご無沙汰してます……」

「おひさしぶり。最近、どう?」

「団体戦に向けて、がんばっております……」

 よろしい。

「ここの出し物、けっこう凄いわよ」

「まあ、地球外テクノロジーですし……」

「……もしかして、飛瀬さんのクラス?」

「はい……あ、将棋部のクレープ、食べました……?」

 私は、食べた、と答えた。

「美味しかったわよ」

「シャートフ星名物、ヤツメヤギのミルクで作ってますからね……」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

「ほ、ほんとに食べてよかったのよね?」

「今のところ、地球人の消化不良は確認されていません……」

 だーッ、あとでお腹が痛くなりそう。

 私はその場を退散した。

 しばらく歩いていると、可愛いハンドメイド系のお店にあたった。

 じぶんで好みのアクセサリーを作ろう、という誘い文句。

 女子が固まってのぞいている。

 私も拝見。

 これは……じぶんで製作する系かな?

 材料と見本がならんでいるだけで、完成品は置いていなかった。

「あ、裏見せんぱぁい」

 ふりむくと、葛城かつらぎくんが立っていた。

 捨神すてがみくんもいた。

「アハッ、おはようございます」

「おはよう。来てたのね」

 捨神くんの話によると、ここは箕辺みのべくんと来島くるしまさんのクラスらしい。

 けど、肝心のふたりは、いないらしかった。

 捨神くんは、こめかみにゆびをあてながら、

「MINEで連絡したときは、教室にいるって話だったんですけどね」

 と言った。

 まあ、そういうこともある。

 おおかた、買い出しに行ったとか、そんな感じだろう。

 こういうお店の材料は、100均のものが多い。

 捨神くんは、

「文化祭って、やっぱり楽しいですね」

 と笑顔を見せた。

 たしか、天堂てんどうに文化祭はないのよね。

 治安がちょっと、という雰囲気だし。

 葛城くんは、

「これやりたいなぁ。1個作ってもいいかなぁ」

 と言って、キーホルダーを物色していた。

 いいんじゃないですかね。

 私も1個作ろう。

 お金を払って、作り方の説明を聞く。

 紫外線ライトをあてて、液体を固めるらしい。

 葛城くんは、

「なるほどぉ、UVレジンなんだねぇ」

 と言って、素材を選び始めた。

 まずは、レイアウトを考える。

 メインのピースは……このワンちゃんにしようかな。ナルに似てる。

「ボクは、このネコちゃんにしまぁす」

 葛城くんが選んだのは、白いふさふさ猫のピース。

 次に、添えるキラキラを選ぶ。

 ナルは黄色のほうが似合いそう。

 葛城くんは、全体的にブルー系を集めた。

 で、これを型にならべるわけですよ。

 ゴム手袋をはめて、レジン液を型に流し込む。

 そのあとピンセットで、パーツをひとつずつ入れる。細かい作業──よし。

 追加のレジンを調整して、これにUVライトを当てる。

 5分ほど待っているあいだ、私は葛城くんたちとお話をした。

「ふたりとも、団体戦はどう?」

「えへへぇ、秘密でぇす」

「天堂は、いつも通りやるだけです」

 葛城くんは、ちょっと自信ありげだった。

 まあ、戦力的には十分だものね。

 天堂は、捨神くんと不破ふわさんの2枚看板で頑張るみたい。

 あ、ライトが終わった。

 ちゃんと冷まして……はい、できあがり。

「葛城くんの、すごく似合ってるわよ」

「裏見先輩のも、かわいいですねぇ」

 おたがいに褒め合っていると、箕辺くんがもどってきた。

「悪い、在庫切れで、ちょっと走ってきた」

「見て見てぇ、ボクのキーホルダー作ったよぉ」

 仲良し3人組の会話が始まったので、私は移動。

 となりは……写真展。

 写真部の展示か。

 ちょっと入ってみよう。

 教室にパネルがならべられていて、いろんな写真が貼ってあった。

 人物、動物、風景──あれ? 将棋がある?

 あ、葉山はやまさんの作品か。

 これは……日日にちにち杯……じゃない。

 単なる部室の風景だった。

 箕辺くんが、だれかと将棋を指している。

 かっこよく撮られてるわね。

「俺の次くらいにイケメンだな」

 いきなり出てくるな。

 私は、わざとらしく溜息をついて、

「そういうのをルッキズムっていうのよ」

 と返した。

「容姿ネタは古いか。じゃあ、俺のほうが辰吉たつきちより将棋が強いぞ」

「小学生みたいなこと言わない。で、何の用?」

「用ってわけじゃないが、このあと、面白そうな出し物がある」

 私は、あまり期待せずに内容を尋ねた。

 すると、松平は急に真剣な顔になった。

「将棋で勝ったら10万円、っていう企画らしいぞ」

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