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第四話
何故こうなったのか、本当に分からない。あざみはソファに座り頭を抱えていた。
突き指をしてから一週間、部活中によりにもよってテーピングが外れてしまい心の底からうんざりしながら保健室に来た。紫苑に頼もうかと思ったが彼は既に剣道部に行ってしまっているので、本当に仕方なく保健室に来たのだ。深見にテーピングをしてもらいとっとと部室に戻ろうとした矢先、保健室の扉が開かなくなった。いつもの引き戸がびくともしない。あざみの力不足かと深見に開けさせようとしたが、彼が試しても結果は同じだった。そのうえ扉だけでなく窓すらどこも開かなくなっていたのだ。背に腹は代えられないと窓を割ろうともしたが、それも不可能だった。
そして今に至る。
「……あのさぁ、こんなことしても私には何もできないけど?」
「いや、俺がどうにかしたわけじゃねぇんだって」
どうせあざみの『力』が見たくてこんな狡い真似をするのだろうと深見を睨みつけるも、彼は困ったような顔をしていた。
「ひまが外でどうにかしてるんじゃないの」
「ひまは今日は休みなんだよ。だから本当に違うんだって」
「じゃあ何が起こってるわけ」
「俺だって知りてぇよ……」
こうなれば仕方ないので部活中の紫苑を呼ぼうとあざみはポケットからスマホを取り出す。しかしながら圏外になっていて、全く使い物にならない。この間の異世界事件の時といい、肝心な時に役に立たないスマホだ。『力』を使えばどうにかなるかもしれないが、深見の目の前で使うわけにもいかない。
どうやっても開かない扉、最近こんな話を萩から聞いたなとあざみはふと思い出す。この学校のどこかの扉が実は開かずの扉で、普段は普通でもある条件の時だけ開かなくなってしまうと言っていた。
「もしかしてこれが噂の開かずの扉……?」
あざみは顔を引きつらせながらそう呟いた。その呟きに深見は怪訝な顔をする。そんな彼にはお構いなしであざみは萩から聞いた条件を思い出そうと必死に頭を巡らせた。噂は大人しく噂のままいてくれれば良いものを、何故毎回本当になってしまうのか。萩が言っていたのは確か開かずの扉の元はおまじないの一種で、そのおまじないは
「仲が、悪い人、と……仲良くなる為の……」
仲の悪い二人だけでその部屋に入り、左手の薬指に約束の形を残す。その話を聞いた時、あざみは馬鹿な話だと思った。仲が悪い人たちが一緒の部屋で二人きりになるわけがないし、左手の薬指に約束の形というのはどう考えても結婚指輪のようなもので、そんな二人に出来るわけがない。
そこまで思い出してから、今の状況を再度考えた。確かにあざみは深見と仲が良くない、そもそもの出会いからして仲が良くなれるようなものではないのだから。あざみにとって深見はやっと手にした楽しい日常を壊しに来た敵なのだ。しかしながらその後の手順を踏んだ記憶は無い、と彼女は自身の左手の薬指に視線を落とす。先ほどテーピングをした指が目に入った。突き指した薬指を支えるように白いテープがぐるりと巻かれている。クーラーがきいているはずの部屋、首筋を流れていく汗。
「ば……………」
「どうした? なぁ、何か分かったのかよ?」
「馬鹿ぁぁぁぁッ!」
あざみの怒声は閉め切られた保健室いっぱいに響いたのだった。




