02
「あはぁ~~かわいすぎる~~」
翌朝、誰よりも早く目が覚めたひまはソファで横になる深見とあざみの姿をうっとりしながら連写で収めていた。大型犬と猫が一緒に寝ているようなその姿は可愛くて仕方がない。SNSでよく流れてくる〝癒しの動物画像〟などでよく見る光景だ。カシャシャシャと高速で流れる音に深見が眉間に皺を寄せ、目を覚ます。ひまは彼が目を開ける直前にそっとスマホを背中に隠した。
「先生おはよ!」
「……ぅん……ひま?」
「も~~寝ぼけちゃって~~! 可愛いんだから!」
「……悪ィ! 今何時だ⁉ 朝飯!」
「あわわわ! お姉ちゃん落ちちゃうから!」
珍しく自分よりも先に起きているひまの姿に、深見は寝坊したのかと飛び起きる。その勢いで隣に寝ていたあざみが転げ落ちそうになり、ひまは慌てて彼女の身体を支えた。しかし落ちずともそんなに騒がしければ流石のあざみも目を覚ます。彼女は寝ぼけ眼のままひまをじっと見た。
「ひま……?」
「おはよう、お姉ちゃん……起きてる?」
「ひまだ……おはよ……」
「え~~⁉ お姉ちゃんから抱き着いてくれるなんて嬉しい~~!」
寝ぼけたままへにゃりと笑ったあざみがひまに抱き着いている。深見は急いでテレビをつけ時刻を確認したが、まだ六時前でほっと胸を撫でおろした。いつもの起床時間と同じぐらいだ。彼は食パンをトースターにセットし、ケトルに水を入れスイッチを入れた。そのまま洗面所へ行き、支度をしてからキッチンに戻る。ソファの上のあざみは頭も起きたようで、彼のことをポカンとした顔で見つめていた。
「おはよう、昨日はありがとな」
「お……おはよ……」
彼が声をかけると彼女はふいと顔を逸らす。昨晩の出来事で甘えすぎてしまったかもしれないな、と深見は反省した。あざみはそのまま洗面所へと消えていく。ひまがその様子をうっとりと見ていた。
「照れてて可愛いよね~~気まぐれな猫ちゃんみたい!」
「あれ、怒ってるんじゃねぇの」
「違うよ~~! も~~先生ってば鈍感なんだから!」
フライパンに溶いた卵を入れ焼いている深見の腕にひまが抱き着く。いかにもご機嫌、といった様子だ。彼女は腕を伸ばして深見の首に指を這わせた。深見が彼女を見下ろすと怖いぐらいにニッコリと笑っている。
「先生は、ひまが一番大事だよね?」
「あぁ、そうだぞ」
「だよね~~! ひまもそうなの、相思相愛!」
「いきなりどうしたんだ?」
「ううん~~! ひま顔洗ってくるね!」
あざみが洗面所から出てきたのを見てひまはスキップで洗面所へ向かった。トーストが焼け、皿にそれぞれ載せていく。スクランブルエッグとハムも載せ、冷蔵庫からオレンジも出して載せた。ポットを出してから茶葉とお湯を入れる。その間に自身のマグカップを用意してドリップコーヒーを作った。ひまとあざみの分のマグカップに紅茶を淹れようと深見が振り返ると、既にあざみがその作業を行っている。客室で着替えてきたのだろう、よく見慣れた姿になっていた。
「悪ィな、客なのに。助かる」
「気にしなくて良いし。ていうか朝からマメだな……家事もできて、お前何ならできないんだ?」
「これぐらいしかできねぇよ。凝った料理とかも作れねぇしな」
「凝った料理?」
「塩釜焼きとか」
深見の言葉にあざみは爆笑した。どこに塩釜焼きを作る家庭があるのか。名前こそ知っているがあざみだって食べたことが無い。そんな彼女を深見は不思議そうな顔で見る。
「料理の本で見たことあるんだけどな、作り方見てもよく分かんねぇんだ……紙を入れるみたいなレシピとかあって……模様とか描ける気もしねぇし……」
「あれは確かお祝いの席で食べる特別な料理であって、家庭料理じゃないし」
「そうなのか……」
「げ、落ち込んでる⁉ もしかして家庭知らないことにダメージ受けた⁉ ご、ごめん……」
昨日の夜泣いた彼を見てしまったからか、ほんのわずかに悲しんでいるようなその表情にあざみは焦る。慌てるその様子が可笑しくて深見は吹き出した。自分が笑われていることにあざみはムッとする。
「悪かったって」
深見は謝りながら彼女の頭を優しく叩いた。あざみはその態度も気に食わずそんな彼の脇腹に一度肘で攻撃してから、ダイニングテーブルへ皿を運び始めたのだった。
Hoeplowのインスタは最近ずっと犬と猫のリール動画ばかりオススメしてきます
あはぁ~~可愛い~~~~




