美肌への第一歩!ルークス家と自然派コスメ開発
翌日、ルークス侯爵邸を訪れた美咲は、長男であるジュリアンと対面した。
「ジュリアン様、この国の女性たちの多くが肌荒れに悩んでいる原因は、重たい白塗りの厚塗りと、それを無理に落とそうとして肌を傷つけていることにあるんです。だから私、肌に余計な負担をかけない『自然派化粧品』を作りたいんです!」
「自然派化粧品……ですか。我が領地には豊かな薬草園や精油の抽出施設がありますが、具体的にはどのようなものを制作されるおつもりで?」
ジュリアンが整った眉を少しひそめ、興味深そうに身を乗り出す。美咲は待ってましたとばかりに、テーブルの上に準備した素材を示した。
「まずは基本となる『化粧水』と『美容オイル』の二つです。まず化粧水ですが、カモミールやローズマリーといった鎮静・抗菌作用のあるハーブを精製水でじっくり抽出した『ハーブの浸出水』を作ります。これがお肌にたっぷりと水分を補給して、荒れた皮膚を優しく鎮静させてくれるんです」
「なるほど、薬草茶の効能を直接肌に応用するわけですね」
「その通りです! そして水分を補給しただけだと、すぐに蒸発してお肌が乾燥してしまうので……ここで登場するのが『美容オイル』です」
「皮脂に近いホホバオイルやオリーブオイルに、肌の修復を助けるカレンデュラの花を漬け込んだ特製オイルです。化粧水でお肌を潤したあと、オイルを数滴伸ばして重ねることで、お肌の水分をしっかり閉じ込める『蓋』の役割を果たしてくれるんですよ」
「水分を補給し、油分で閉じ込める……実に理にかなった理論だ。ですが美咲、この国では『油分を顔に塗る』という文化はあまり馴染みがありません。べたつきを嫌う者も多いかと思いますが?」
ジュリアンの鋭い指摘に、美咲はふっとプロの自信に満ちた笑みを浮かべた。
「ふふ、大丈夫です! 植物由来の良質なオイルは肌なじみが良く、べたつくどころか、お肌をもちもちの極上に変えてくれます。それに、このオイルは濃い白塗りを浮かせて優しく落とす『クレンジング』としても使えるんです!」
「メイク落としにまで使えるとは……! それは実に画期的ですね」
感嘆の声を漏らすジュリアンの瞳に、熱い知的な好奇心が宿る。彼は美咲のプロとしての見識と情熱に深く感銘を受けたように、優しく微笑みかけた。
「素晴らしい構想です、美咲。我がルークス侯爵家の薬草園と調合室、そして腕利きの職人たちを全面支援させましょう。君の目指す『自然派化粧品』、ぜひ一緒に完成させましょう!」
ジュリアンの言葉に、美咲はパッと表情を輝かせた。
「本当ですか!? ジュリアン様、ありがとうございます!」
「礼には及びません。あなたの着眼点と美への情熱は、この国の女性たち……いえ、我が家の事業にとっても素晴らしい革新となりそうだ」
「さっそく明日から領地の薬草園と調合室の手配を進めましょう。……ところで美咲、これほどの知識と技術、あなたは前の世界でどれほど努力を重ねてきたのですか?」
ふいに見せられたジュリアンの真摯な眼差しに、美咲は少し照れくさそうに頬を緩めた。
「向こうではプロのヘアメイクとして働いていたんです。毎日たくさんのお客様のお肌を見て、どうすれば一番綺麗になれるか考えていて……。だからこの世界でも、みんなが自分の素肌を好きになれる手助けがしたいんです」
「なるほど、プロの矜持というわけですね。……実に美しい思いだ」
そう言ってジュリアンは美咲の手をそっと取り、その甲に優しく唇を寄せた。
「君のその情熱、私が全力で支えることを約束します……美咲」
「~~っ! ジュ、ジュリアン様……!?」
突然のスキンシップと、名前を呼び捨てにされた衝撃に美咲の顔が瞬時に真っ赤に染まる。
「ふふ、これからは私もあなたを『美咲』とお呼びしても? 我が家の大切なパートナーとして」
「あ、はい……! よろしくお願いします、ジュリアン様……!」
赤面する美咲を、ジュリアンは愛おしそうに、そして少し悪戯っぽく見つめていた。ルークス侯爵家との強力なパイプを得て、自然派コスメの開発はいよいよ本格的な第一歩を踏み出すのだった。




