理想のドレスと新たな提案
クラリス侯爵家に到着した4人を、葵のお相手である長男のレオン、次男でデザイナーのルーク、そして職人のバルトが出迎えた。
「突然のご訪問、申し訳ありません。実は、急遽ドレスを作ることになりまして……」
葵が事情を話す。1か月後に王家主催の夜会へ出席することになり、4人の体にぴったりフィットするドレスが必要になったのだと伝えた。
「もちろん、私もお手伝いできるところは全力で手伝います!」
真剣な葵の言葉に、レオンは優しく微笑んだ。
「そういうことでしたか。では、採寸は母上に任せるとして、ドレスの制作はルーク、バルト、そして葵様で進めることにしましょうか」
「はい! よろしくお願いいたします!」
さっそく4人はエレナ夫人のもとへと案内され、採寸を受けることに。
メジャーを当てながら、エレナ夫人は感嘆の声を漏らした。
「まあ~! 異世界の乙女は本当に素晴らしいプロポーションですわね! 出るところはしっかり出て、引き締まるところはキュッと引き締まって……これではドレス姿の皆様に、会場の殿方が釘付けになってしまいますわね、ほほほ!」
夫人から絶賛された4人は、少し頬を赤く染めながら感謝を伝え、採寸を終えてデザイン室へと向かった。
「さて、どんな色でどんなデザインがお好みかな?」
デザイナーのルークが尋ねると、百合が首をかしげた。
「そもそも、この国にはどんなデザインのドレスがあるのですか? 私は先にデザインを決めてから色を選びたいです」
「それなら、見本を見せよう」
ルークはデザイン画を広げて説明を始めた。
「まず、この国の女性たちが一番好むのがスレンダーラインだ。背が高い女性が多いからね。可愛らしいデザインはあまり似合わないと思われているんだよ」
「可愛らしいデザインって、どんなものがあるんですか?」
質問に応じるように、ルークはさまざまなデザイン画を提示した。
「そうだね、プリンセスライン、Aライン、マーメイドライン、ベルライン、エンパイアライン……といったところかな」
ずらりと並んだデザイン画を見て、百合が目を輝かせた。
「わあ~! このプリンセスラインが素敵! 私、このデザインがいいわ」
続いて美咲もデザイン画を指差す。
「私は大人っぽいマーメイドラインにしようかしら」
「じゃあ、私はAラインにするわね」と葵。
しかし、16歳の凛だけは腕を組んでうーんと悩んでいた。
「私は一番背が小さいですし……なんだかどれも似合わなさそうな気がして……」
落ち込みかける凛を見て、葵がパッと表情を明るくした。
「それなら凛ちゃんもプリンセスラインにして、丈をミニにすればいいわ! そうしたら凛ちゃんの可愛さと健康美がすっごく引き立つと思うの!」
それを聞いたルークは少し驚いた顔を見せた。
「この国では、あまり脚を出すのは恥ずかしいとされているんだよ?」
だが、葵はフフッと胸を張る。
「私たちの世界ではミニなんて当たり前ですよ! 自分に似合うもの、好きなものを着るのが一番のおしゃれなんです!」
葵の堂々とした言葉に、レオン、ルーク、バルトの3人は顔を見合わせ、感心したように頷いた。
「……そこまでおっしゃるなら、ぜひそのように作ってみましょう」
デザインが決まった4人だったが、今度は「色」で悩み始めてしまった。
すると、美咲が提案する。
「ねえ、それならいっそみんな『白』にしない? まるでウェディングドレスみたいで素敵じゃない?」
「そうね、白がいいわ! 素敵なレースや刺繍をあしらったら、すごく華やかで上品になると思う!」
葵も大賛成だ。
「白、ですか……」
レオンが少し考え込むように呟いた。
「この国の女性は、赤や濃いピンク、グリーンといった派手な色や豪華な装飾を好む傾向があります。ですが……白も素晴らしいですね。派手さはなくとも、格段に品良く、美しく映えるはずです」
こうして無事に4人の色とデザインが決まり、クラリス邸での打ち合わせは終了した。
「よろしくお願いいたします!」
お世話になった皆にお礼を言い、充実した気持ちを抱えながら、4人は離宮へと戻っていくのだった。




