離宮の夜と、それぞれの未来
修復を終えた離宮へ荷物を運び込み、部屋の片付けが一段落ついた頃には、窓の外は綺麗な茜色に染まっていた。
「はぁ~っ、片付いた片付いた! 自分の部屋があるって、やっぱり落ち着くね」
リビングのふかふかなソファーに深く腰掛け、凛が大きく伸びをする。
夕食の時間になると、配属された離宮の専属料理人たちが仕度した豪華なディナーがテーブルに並べられた。芳醇な香りを漂わせる最高級のワインと、極上のメインディッシュ。
「おいしい……! さすがプロの料理人さんたちの料理ね」
百合がグラスを傾けながら感嘆の声を漏らし、葵と美咲も笑みをこぼす。
お腹も満たされ、美味しい料理とワインで場が和んだところで、百合が少し表情を引き締めて問いかけた。
「ねえ、みんな。ちょっと真面目な話なんだけど……『結婚』とか『旦那さん候補』のこと、どう思ってる?」
突然の問いかけに、グラスを置いて考え込む3人。
この国に突然召喚され、女尊男卑の環境で手厚く保護されてきた。各邸の男性陣——ギルバートたちやジュリアンたち、レオンたちやレオニダスたちは、みんな驚くほど親切で優しく、大切にしてくれている。
「正直、みんなすごく良い人たちだし、大切にされているのは伝わるんだけど……」
美咲が落ち着いたトーンで口を開く。
「いくら親切にされても、召喚されてまだ日が浅いじゃない? 正直、すぐに誰かと結婚なんて心の準備が追いつかないわよね」
葵も深くうなずいた。
「そうそう! 恋心っていうか、恋愛感情を育てる時間すらなかったもの。感謝はしてるけど、それと『すぐに結婚』はまた別のお話よね」
特に最年少の凛は、力強く拳を握りしめた。
「うん! 私はまだ16歳だし、この国の結婚可能年齢の18歳まで、あと2年も時間があるもん。それまでは、葵ちゃんや美咲ちゃんにプロデュースしてもらいながら、自分の好きなことを思いっきりやりたいな!」
「凛ちゃんの言う通りね」
百合は優しく微笑み、ワイングラスを軽くかかげた。
「私たち、まずは異世界で自分の足で立つための『仕事』を確立させたいのよね。私はカフェと健康的なスイーツ、美咲ちゃんは美容サロン、葵ちゃんは服飾工房。恋愛に流される前に、まずは自分たちの夢をこの離宮で叶えましょう!」
「「「おーっ!!!」」」
4人の意見は見ごとに一致した。
甘い恋愛話に流されることなく、まずは自分たちの『仕事』と『人生』をしっかり歩んでいくこと。
離宮の暖かい明かりの下、4人は互いの手を取り合い、新しい生活への決意を固く誓い合うのだった——。




