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騎士団のアイドルと、新たなる不穏な影

シルフィード侯爵邸の訓練場に、澄んだ金属音が響き渡る。


「はい、そこまで! 凛、筋が良いですね。身体の軸が全くぶれていません」


騎士長男のレオニダス(22歳)が感心したように木剣を引いた。元陸上部の高校生である凛は、持ち前の運動神経と脚力を活かし、この屋敷での剣術の基礎訓練にもすっかり慣れてきていた。


「へへ、ありがとうございます! 運動するのはやっぱり楽しいです!」


汗をぬぐって太陽のような笑顔を向ける16歳の凛に、側で見守っていた次男のガブリエル(20歳)が優しくタオルと冷たい水を手渡す。


「凛様、あまり無理はなさらないでくださいね。……ところで、本日は訓練の後に街へ行くお約束でしたでしょう? 準備はいかがですか?」


「あ、はい! すぐ着替えてきます!」


数日前に葵から届いたリメイクドレスに着替えた凛が姿を現すと、レオニダスとガブリエルは息をのんだ。


スポーティで健康的な凛の体に完璧にフィットしたドレスは、16歳らしい若々しいしなやかさと、元の世界の女性らしい柔らかな胸元の膨らみを綺麗に引き立てている。


この国の寸胴体型しか知らなかった二人は、凛の無自覚な魅力に顔を真っ赤にしつつも、愛おしそうにその手を引いて馬車へと乗り込んだ。


賑やかな街に到着すると、凛は見るもの全てに目を輝かせた。


「わあ……! このお店、すごく可愛い雑貨がいっぱい!」


ふと足を止めた可愛らしい雑貨店の店頭で、凛は小さな鳥のモチーフが施されたブローチに目を奪われた。繊細な細工が施された真鍮製のブローチだ。


「お気に召しましたか? 凛様」


レオニダスがそっと声をかけると、凛は慌てて首を振った。


「あ、いえ! 見ていただけです、私には勿体ないですし……」


「そんなことはありません。凛様のその輝く笑顔にぴったりです」


ガブリエルが微笑みながら店主にお金を払い、その場で凛の胸元にそっとブローチを留めてくれた。


「……ありがとうございます! すごく嬉しいです、宝物に書きますね!」


無邪気に喜ぶ凛の姿に、二人の騎士の胸は甘い愛おしさで満たされていく。


買い物を存分に楽しみ、「少し喉が渇きましたね、評判のカフェへ向かいましょうか」と大通りを歩いていた、その時だった。


「まあ……! そこにいるのはシルフィード侯爵家のレオニダス卿とガブリエル卿ではありませんこと?」


甲高く、どこか粘つくような声が静かな通りに響いた。


振り返ると、派手で華美なドレスを身にまとった若い令嬢が、複数の大柄な男性(夫や従者)を引き連れてこちらへ歩いてくるのが見えた。クラリッサとはまた違う、厚化粧で高慢な笑みを浮かべた新たなワガママ令嬢だ。


そのギラギラとした視線は、二人の騎士長男たちに向けられた後、彼らに守られるように立つ小柄な凛へと向けられ、蔑むように細められた。


「こんな貧相でちっぽけな娘を侍らせて……シルフィード家の眼識も落ちたものですわね?」


新たなワガママ令嬢の登場で、凛たちの前に不穏な空気が漂い始めました!

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