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魔法のリメイクと、届けたい想い

翌朝、自室で目を覚ました葵は、ある重大な問題に気づいて頭を抱えた。


(……あ、着替え……持ってきてない!)


異世界に突然召喚されたため、葵の手元には着てきた服しかない。慌ててエレナ夫人に相談すると、夫人は快く「我が家のドレスをお使いなさい」と何着もの豪華な衣装を用意してくれた。


しかし、衣装を身体に当ててみた葵は思わず苦笑いした。


「大きい……それに、丈もかなり長いです」


この国の女性は平均身長が170センチほどあり、高身長でスレンダーな寸胴体型が多い。対する葵は小柄ながらも胸やお尻に丸みがあるメリハリ体型。そのまま着るとブカブカで、せっかくのドレスが台無しになってしまうのだ。


「奥様、申し訳ありません。このドレス、私が自分の体型に合わせてリメイクさせていただいてもよろしいでしょうか?」


「まあ、よろしいのですか? ぜひ見てみたいわ」


葵はさっそく裁縫道具と足踏みミシンを借りると、滑らかな手つきでハサミを入れ始めた。丈を詰め、ウエストに綺麗なシェイプをつけ、デコルテが綺麗に見えるように襟ぐりを微調整していく。


作業に没頭する葵の横顔は真剣そのもの。その美しいプロの仕事ぶりに、様子を見に来た筆頭職人のバルトや長男のレオン、次男のルークも息を呑んで見惚れていた。


——数時間後。


「出来上がりました!」


着替えて姿を現した葵に、その場にいた全員が言葉を失った。

ブカブカだったドレスは見事に葵のスタイルを引き立てる極上のラインへと生まれ変わり、品のある可憐な雰囲気を纏っていたのだ。


「素晴らしい……! 我が家のドレスが、これほど華やかに生まれ変わるなんて!」


エレナ夫人が手を叩いて絶賛し、デザイナーのルークも「着る人の体型を完璧に計算した神業だよ……!」と目を輝かせる。冷徹だったレオンも、美しく仕上がったドレスを着こなす葵から目が離せなくなっていた。


「……あ! もしかして、他の場所に預けられているみんなも着替えに困っているんじゃ……?」


ふと思い至った葵は、クラリス侯爵に「みんなの分もリメイクして送ってあげたいです」とお願いした。侯爵は「もちろん協力しよう」と快諾し、葵は仲間たちの顔と体型を思い浮かべながら、心を込めて三者三様のリメイクドレスを仕立て上げたのだった。



夜、作業を終えて自分の部屋に戻った葵は、ベッドのふちにぽつんと腰を下ろした。


(みんな、ドレス届いたら喜んでくれるかな……)


静まり返った部屋で一人になると、昼間の高揚感が引いていき、胸の奥から寂しさがこみ上げてくる。


頭に浮かぶのは、元の世界に残してきた大好きな家族の姿だった。


地元でアパレルショップを経営し、いつも楽しそうにお客さんに服を選んでいた両親。

そして、そのお店を元気に手伝っていた大好きな二人の妹。


幼い頃から服に囲まれ、家族みんなで流行のデザインや生地の話をしながら笑い合っていた温かい日々。


(私がいなくなって、みんなでお店を回せているかな……心配してるだろうな……)


大好きな家族の笑顔を思い出すたび、瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちる。


「……お父さん、お母さん……会いたいよ……」


葵はひざを抱え込み、家族への恋しさと寂しさにそっと声を殺して泣くのだった。

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