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私のように近臣であれば、ほとんどが彼のよさを理解しています。
彼の努力も優しさも、想いだって痛いほどに伝わっているはずです。
自分がその一人だと自称するつもりはありませんけれど、優秀な人材が彼の周囲に集まって支えていることは彼の魅力からなるものだと思います。
思いますけれど、彼の努力を考えますと、それが報われているとは思えませんでした。
いかに彼が努力家であるか私は知っていました。
それだって彼は満足げに微笑んでいるのですから、私から何を言うではありません。
ただ上を目指している彼は、周囲からの評価を気にしていないという様子でありますし、それは立派で素晴らしく魅力的なことでした。
それが彼の魅力の一つであると私は認識しているのですけれど、同時に私が守らなければならないという重責に追われることでもありました。私しかいないなんて、とんだ自惚れからなるもののようではありますけれど、そんなはずはありません。
自惚れだとはわかっておりますけれど、けれども私はそれを止められないで、頑張ってしまいたくなるのです。
頭が少しでもある方ならば、いくらだって彼の魅力はわかるのですから、効率よくとでも言うのか、優秀な人のみが彼のもとには集まってきます。
どれだけ無能な方々が彼を批判しようとも、わかる人にはわかるのですから、無理に私ばかりが責任を感じる必要だってなかったかもしれません。
頼れるだけの人もいるのですから、頼ることも許されるのでしょう。
それなのに私は責任感を勝手に持ってしまっているのでした。
もしかしたら、自分が、自分がと思ってしまっているのかもしれません。
「そんな表情をしないでくれ。いなくなってしまいそうで、怖くなる。この俺に恐怖させるのなんて、お前だけなんだから、少しは自覚しろ」
彼を見上げて僅かに視線を重ねると、ビクッと震えました。私もですし、彼もです。
「消えません、私は消えませぬ。いつか仕える価値のない人でなくなる日まで、つまりあなたがあなたであり続ける限り、私は隣を離れません。きっとあなたがお望みの場所へ、私がお連れします」
できるだけ強く言いきった私に、彼は無理矢理に私の顎を掴んで目を合わさせてきました。
その状態であると、強い姿勢はどうしたって貫けないのが私でした。
ですが私の手で、彼の望む場所へきっとお連れしたかったのです。
大きな夢のために焦りは禁物であることも、私の命が短いことも私はわかっておりました。矛盾する時間の使い方の、解決策を私は用意しなければなりませんでした。
私自身がいなくなった後も、遺志を継いでくれる人を遺書に従わせて操ることで、体が亡くなっても私が彼への道を開いて行けるように。そんな方法しか思いつきやしないのでした。
継いでくれる人などいないのですから、書に纏めて彼に渡すのが精々できることでしょうが。
道半ばで私が死ぬことをわかっての、そこまでを計算としているということへの、彼からの非難であることを私を知っておりました。
寄り添えとのご命令であるのだとも思えるのですが、ただ私が諦めていることが気に入らないだけのようにも思えるのでした。
「それじゃあお前が消えるときは、俺に価値がなくなったときであると?」
「ええ、そういうわけですね。私の何もかもが消えてしまいましたら、そのときは、そういうわけなのですよ」
「お前自身は死んだけど、本でも残しておいてまだ死んでない、みたいなのはなしな」
「余計なことを考えないでくださいな。考える仕事は私に任せて、仕事を奪わないでくださいな。お願いだから、考えなしの夢想家でかつまっすぐにあってくださいな。叶いようもない夢想を叶えさせてあげますから、その裏なんて見ないでくださいな」
私の言葉から、私の意図は間違えなく伝わっているだろうと思います。
考えなしであってくれとは頼みましたものの、学力的な問題ではなくて、どうしたって彼は聡明な人でしたから。
喜ばしいのが恨めしいとすら言えました。




