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「あなたに知っていただきたいのは、私の嫉妬心というものです。
本来であれば隠しとおしたいと思うものですが、今の私は是非、あなたにお話ししたいと思うのです。開き直っているのだと言えば、それは確かに私に近しく、わかりやすい感情の表現だと思います。しかし少しばかりそれとは違っているのだということも、是非認識してくださいませんか?
言うならば、希望でありながら義務感でもあるものなのです。これもまたそうなのです。どれもそういったものであることが、あなたはわかっていましょう? 私というものが、そういうものなのです。
もしあなたが桜を嫌っているとしたら、私は桜を恐れずに済んだことでしょう。それだったら、私はずっと桜を好きでいられたでしょう。
ふふっ、つまらない話ですよね。これはもう本当に、つまらない私の嫉妬心なのでしょう」
ここで私は一息吸いました。
何も恥じず厭わず彼には語るのだと決意したはずですのに、躊躇ってしまったのです。俯いてしまうのです。
私の醜い姿でもお見せする覚悟はございました。
その気持ちには、嘘はありません。
嫌だったのはそこではないのです。
こんな姿を見られるのが嫌なのではなくて、彼にお見せできるようなものではないような気がしたのです。
気がしたではなくて、それはそうなのでしょう。
醜いところを彼に見せつけるのは、むしろ自己顕示欲の強い私の自己満足だとすら言えます。
余計なことまでを言う必要はなく、そう思えた私は黙りました。
「あっ、まだ私の心に残っていますよ。絶対に俺を裏切るな、あなたそう仰いましたでしょ? あの日の衝撃は大きかったのですから。
元より鋭いお方だとは思っておりましたけれど、あの頃からあなたは更に冴え渡っておりましたね。いっそのことあなたの傍から消えてしまいたいと思うくらいに、それも封じられていたわけではありますけれど、あなたは鋭い目で私のことをご覧になっておりました。
いつしかあなたの瞳に晒されるのが、そのものが怖いことのように思えてきたくらいなのですから。
すみません、私を処刑するのはいけないことですか? 私が生きることを諦めること、私があなたを裏切ること、その他諸々禁止されておりますけれど、私が責任を背負って処刑されることまでを禁止された覚えはございません。
今、大規模な反乱が起こっております。どこかしこで起こっております。この国でも、起こっております。
これ以上国を分裂させ、これ以上国を増やすわけにもいきませんし、必ず反乱を鎮めなければなりません。戦乱を長引かせないためにも、早いうちに芽を摘んでおくことは重要です。
災いを齎した元凶として、どうせ死ぬというのなら、私を処刑しておくのはいかがなものです?
死を大切にしてくださることも嬉しいですけれど、死を無駄にしないのもありだとは考えられませんか?
私が死ぬことにより、少しでも見知らぬ平和というものに貢献できるというのなら、死に甲斐もあるというものです。生き甲斐のような言い様で、死に甲斐なんて言葉があるとは思えませんがね。
とにかく、効率的に考えてみたらば、悪くない案ではないかと思うのです。私が提供します最後の策として、受け入れては頂けないかと思うのです。
堂々と死にます。力強く死にます。志を持って死にます。それでもいけないのでしょうか?
最期まであなたを裏切るようなことはなく、むしろあなたへの忠義のために最期を迎えようと思っているのです。それでもいけないのでしょうか?
鎮められない反乱を見ながら、何も対策を打てていないうちに、無力なままで死ななければならないことが私は悔しくてならないのです。せめて何か意味を持って、何かを残していきたい、何か、何か、そう思うのです。
私は死を望んでいるわけではなく、生を諦めているわけでもないのだということを、あなたはわかってくださっているはずです。
だからこそそれが許されないのだということ、私もわかっておりますけれど……。
だからこそ私としても提案をすることが苦しいのだということ、あなたもわかっているのだと考えます。だからこそ、私ははっきりと言えるのだと知ってください。
許されないなら許されないでいいのです。それだけあなたに大切にされているのだと、私も喜びますし、誇りに思います。
一つの案として、一つの可能性として、それを持っておいてくださったらと、そう考えて口にしただけです。頭の片隅にだけ入れておいてくださいませ」
「……ああ、考えとく」
ぽつりと彼はお答えになりました。
本当にそうなってくれと望んでいる私はいませんけれど、私の案を彼が選択肢として持っておいてくださることが、私にはどこか嬉しく思えました。
理由や内容ではなく、事実でした。




