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乙女な私はただ恋をしておりました。
恋に生き恋に死ぬ、血腥いことなどは品のない方が他のすることで、貴族の生まれである私には関係のないことです。
私が恐れるのは、彼の愛が失ってしまうことただそれだけで、持ち前の純情さで私は彼を待ち続けるのでした。
疑ってしまう私を吐き捨てて、待つのです。
女なのだから、彼が通ってきてくださるのを待つことしかできないのですが、だからこそ彼に目移りされないよう必死でした。
いつだって綺麗にして、私は彼を待っているのです。
他の女に彼を取られてしまうくらいならば、私は死んだ方がましでした。
そして私には、そうならないような方法がまるでわかっていないのでした。彼を繋ぎ止めておく方法が、わかっていないのでした。
運命に身を任せて、彼の永遠を信じるしかないのです。
いっそのこと、こちらから彼を退けてしまおうかなどと考えました。
それほどの魅力が私にはないとしても、手に入らないものとなると、不思議とほしくなるという心理があります。
何をしても許してくれる安い女ではなくて、一途に尽くさなければ触れることさえ許されない高い女である方が、長く彼の愛を独占できると考えました。
しかしそれで私が怖いのは、私が拒んだことにより彼が私への愛をなくすことでした。
手に入らないのならいらないと、投げ捨てられてしまう恐怖でした。
彼に依存させようと考える前の段階として、私が彼に依存しているせいでした。
それならば、私のこの気持ちを伝えてしまいましょうか。
愛おしくて仕方がなくなってしまったので、あなたとは別れたいのですと、彼に伝えてしまいましょうか。
決して私の愛がなくなったわけではないのだとわかれば、彼だって私に通うことに引け目を感じることはないでしょう?
愛されていない女に通う惨めさも味わうことがないわけですから、通いやすいのではありませんか?
なおかつ、簡単には従わない姿勢も示せますから、私への愛が本物だと証明するために、彼は私への愛をより強いものだと自ら勘違いするではありませんか。
卑怯な手段でしたが、有効なものだと思われました。
彼が気持ちを勘違いさせている最中で、目を醒ましてしまうことがあっては。
彼が私を高い女ではなく重い女と感じるようなことになっては。
不安要素はそれでもやはり残りました。
今の彼が私を愛してくださっていることがわかるからこそ、私にはどうしたらこの幸せが続けられるのかが、大きな問題となっているのでした。
幸せを知っている私は、彼が通って来なくなってしまった晩年を、一人で泣きつつ生きる自信がありませんでした。
どうしたらいいのか、私にはわからないと思うのです。
『 忘れじの行く末まではかたければ 今日を限りの命ともがな 』
後朝に、そんな歌を私は残しました。
私の手元に歌がなくなっていたのは、彼が持ち去ってしまったからだと思われます。
どうやら私の死を彼はお許しにならないようでした。
あの歌が私の手元に戻ってきたときは、愈々彼が私を必要としなくなるときだというわけでしょう。
心臓を握られているような状態に感ぜられました。
彼の愛が辛くて、私の涙は止まりませんでした。
平和、彼の愛、健康な体、それは私がほしくて堪らないものでした。
けれど夢の中の私は泣いていました。
喉から手が出るほどに私が欲してやまないものを全て持っているくせして、泣き崩れて、恐怖と不安から全てを捨てようとさえしておりました。
幸せは邯鄲の夢、短く儚い栄枯盛衰、今更それを私に思い知らせるおつもりでしょうか。
こんなに虚しくなるんなら、兵法以外の知識なんか入れるんじゃなかった。……それは、後悔ではありませんでした。




