第92回「攻撃の意思はない」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
紅貝の魔王は、みるみる真っ赤に染まっていく。その身体から、ただならぬ力が感じられた。
レインは神ナリの剣を構える。
「なんか悪さしてるけど、さっさと倒す!」
神ナリの剣へ、魔力を集め始める。
「そうよっ!」
アイリスも女神の杖を構えた。
ナイトも女神のカメラをしっかりと握る。
「頼むぞ!」
「任せてっ!」
レインは、さらにチャージを急ぐ。
しかし――。
紅貝の魔王は、こちらを見ている。
……攻撃してくる様子はない。
「……」
ただ、じっとレインたちを見つめているだけだった――。
アイリスが、少しだけ首を傾げる。
「ねえ、あいつ」
「うん?」
「私たちを攻撃する気、ないんじゃない?」
レインも紅貝の魔王を見つめる。
「……そうみたい」
確かに、紅貝の魔王から敵意は感じられない。襲ってくるわけでもない。魔法を撃ってくるわけでもない。
ただ――。
クリムゾンシェルを撒いている。
「被害は最小で終わりそうね」
レインはそう呟きながら、神ナリの剣へのチャージを続ける。
「もうちょっと……!」
神ナリの剣へ、魔力が集まっていく。
光が、少しずつ強くなっていく。
その時だった――。
紅貝の魔王が動いた。
ふわっ。
「えっ?」
紅貝の魔王の身体が、地面から浮き上がった。
そのまま――。
すーっ……。
空中を滑るように移動していく。
レインが慌てて顔を上げる。
「あっ! 逃げないでっ!」
ナイトがカメラを抱えたまま走り出す。
「追いかけるぞ!」
「分かった!」
アイリスも後を追う。
三人は、紅貝の魔王を追いかけて走った。
しかし――。
紅貝の魔王は、攻撃してこない。
ただひたすら、空中を移動していく。
「待ってー!」
レインたちが必死に追いかける。
そして――。
紅貝の魔王が、次の田んぼへ到着した。
ふわりと地面へ降りる。
そして、また――。
クリムゾンシェルを撒き始めた。
「また!?」
レインが叫ぶ。
「別の田んぼにも撒いてる!」
アイリスも驚く。
紅貝の魔王は、次々とクリムゾンシェルを田んぼへ放っていく。ナイトは、その様子をカメラに収めながら呟いた。
「こいつ、逃げてるんじゃない」
「……」
レインは田んぼを見る。
クリムゾンシェルが、どんどん増えていく。
一匹……二匹……そして……。
田んぼいっぱいに広がっていく。
「田んぼが壊れちゃう! やめてっ!」
レインが叫ぶ。
しかし――。
紅貝の魔王は、レインたちへ攻撃することなく、再び空中へ浮かび上がった。
ふわっ。
そのまま、次の田んぼへ向かっていく。
「あっ、また行った! 待って!」
レインたちは、必死に追いかける。
走りながら、レインは神ナリの剣を握りしめる。
まだ、魔力は十分に蓄えられている。
いつでも、一閃を放てる。
だが――。
今は、斬ることよりも。目の前の田んぼを守ることの方が気になっていた。レインは、飛んでいく紅貝の魔王へ向かって叫ぶ。
「コメライス村の田んぼを――これ以上荒らさないでっ!」
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※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




