第89回「残るコシヒコと朝ご飯」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
コメライス村――。
魔王の予報を受け、村民たちは避難を始めた。
家を確認し、必要な荷物をまとめ、それぞれが避難場所へ向かう。
そして――。
村民は、全員避難を終えていた。
さっきまで人の声が聞こえていた村は、静まり返っている。
その中に、レインたちともう一人。
コシヒコが残っていた――。
レインは、コシヒコを見る。
「コシヒコさんは、避難しなくて良かったんですか?」
コシヒコは、いつもの穏やかな表情で答えた。
「君たちが残って戦うのに、村全員いなくなるのもな」
レインは何も言わず、コシヒコを見る。
「俺くらいは、残っておこうと思ってな」
「ありがとうございます」
レインが頭を下げる。
アイリスも心配そうに続けた。
「でも、無理はしないでくださいね」
「分かってるさ」
コシヒコは、いつものように笑った。
そして――。
何かを思い出したように、付け加える。
「それにな、マカモの面倒もあるしな」
レインが目を見開く。
「あっ! そうだった!」
「確かに……」
アイリスも頷いた。
ナイトが、遠くの田んぼを見る。
「村人は避難できても、マカモは連れて行けないか」
遠くの田んぼでは――。
数羽のマカモが、水の中を気持ちよさそうに泳いでいた。
「クワッ」
その鳴き声が、静かな村に響く。
レインはマカモを見つめた。
そして、ぽつりと呟く。
「なんだか、いつも通りですね」
「そうね」
アイリスも静かに頷く。
ナイトは女神のカメラを下ろし、村を見渡した。
そこに残された穏やかな日常を見て呟く。
「守るしかないよな……」
◇
村民たちが全員避難した翌日――。
コメライス村は、静まり返っていた。
いつもなら聞こえてくる村人たちの声もない。
誰もいない道。
静かに佇む家々。
そんな静かな村の中で――。
村長の家では、朝ご飯の準備が始まっていた。
食卓には、コメライス村自慢のおにぎり。焼き魚に、温かな汁物。炊き立てのお米の香りが、部屋いっぱいに広がっている。
それを見たレインの目が輝いた。
「わぁ! 朝からご馳走ですね!」
「お米が主役ね」
アイリスも嬉しそうに食卓を見る。
コシヒコが胸を張った。
「うちの村自慢だからな」
ナイトも料理を眺める。
「これは楽しみだ」
料理を作っているのは、コシヒコとレイン、アイリス。料理がそこまで得意ではないコシヒコを、二人が手伝っている。そしてナイトは、料理を運ぶ係だ。
「ここに置くぞ」
ナイトが料理を運んでくる。
「お願いしまーす!」
レインが返事をする。
「汁物、できたわよ」
アイリスも鍋を運んでくる。
「こっちも完成です!」
レインも料理を並べていく。
コシヒコが、少しずつ料理で埋まっていく食卓を見ながら笑った。
「皆で作ると早いな」
一人では大変なことも、皆でやれば早く終わる。
そんな当たり前のことを感じながら、四人は協力して朝ご飯を準備していった。
やがて――。
食卓が料理でいっぱいになった。
「いただきます!」
レインが元気よく手を合わせる。
そして、おにぎりを一つ手に取った。
ぱくっ。
「んー!」
レインの顔が、一気に明るくなる。
「おにぎり、うまー!」
「お米、最強なのよ」
アイリスもおにぎりを食べながら頷く。
「分かる!」
ナイトも頷いた。
「ハハハ、嬉しいこと言ってくれるな」
コシヒコは、嬉しそうに笑う。
「だって、本当に美味しいです!」
レインが夢中で食べる。
「コメライス村のお米、最高ね」
アイリスも笑顔になる。
「そう言ってもらえると、作ってきた甲斐があるよ」
コシヒコも嬉しそうに答えた。
ナイトが、ふと窓の外を見る――。
誰もいない村。 いつもなら聞こえてくる人々の声も、今日は聞こえない。
「……やっぱり、静かだな」
ナイトがぽつりと呟いた。
レインも、おにぎりを手にしたまま窓の外へ目を向ける。
「……そうだね」
昨日まで一緒に田植えをしていた村人たち。 一緒に笑って、食卓を囲んだ人たち。今は、その姿がない……。
「早く、みんな帰ってこれるといいね」
レインが静かに言う。
レインは、窓の外へ視線を向けた。
「そのためにも、この村を守らないと」
「そうだな」
コシヒコも頷いた。
窓の外には、植えられたばかりの苗が並ぶ田んぼが広がっている。 その水田を、数羽のマカモが泳いでいた。
「クワッ」
「マカモも朝ご飯かな?」
レインが笑う。
「きっとそうね」
アイリスも微笑む。
「今日も元気そうだ」
コシヒコも、穏やかな表情でマカモを眺めた。
――村人たちの姿はない。
それでも、朝の時間はいつもと変わらず流れていた。コメライス村では、静かな朝が続いていた。
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※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




