第86回「かみなりいっせん」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
コメライス村の夜――。
村長の家では、夕食を囲みながら談笑が続いていた。今日一日の田植え体験を振り返りながら、穏やかな時間が流れている。
「今日は本当に楽しかったですね!」
レインが笑顔で話す。
「ええ。田植えは大変でしたけど」
アイリスも頷く。
そして、少し腰をさすった。
「腰が痛いです……」
「ハッハッハ!」
コシヒコが豪快に笑う。
そんな二人を見ながら、コシオが口を開いた。
「今日はうちの客間に泊まってください」
「いいんですか?」
レインが顔を上げる。
「もちろんです。ゆっくり休んでくださいね」
ヒカリも優しく微笑む。
「ありがとうございます」
アイリスが頭を下げた。
ナイトが明日の予定を確認する。
「明日は帰るんだったな」
レインが元気よく答える。
「また稲が実った頃に来て、取材配信をする予定です!」
「その頃には、田んぼも綺麗な稲でいっぱいになっているでしょうね」
コシオが窓の外へ目を向ける。
「楽しみです!」
レインも嬉しそうに笑った。
そんな話をしながら、レインたちは少しずつ村の皆とも打ち解けていった。
すると――。
とことこと、ヒナタが何かを持ってやって来る。
その手に握られているのは、柔らかい棒だった。
「レイン姉ちゃん!」
「ん?」
レインが振り向く。
「いくよー!」
「なんだーい?」
レインは笑いながら、ヒナタを見る。
「何企んでるー?」
ヒナタは答えない。
ただ、持っていた柔らかい棒を――。
ぎゅっと構えた。
そして、早足でレインへ近づいていく。
「かみなりいっせん!」
パコッ!
柔らかい棒が、レインに軽く当たった。
「うわぁー!」
レインは大げさにのけぞる。
「ヤラレター!」
そのまま、ばたんと倒れ込んだ。
「やったー!」
ヒナタが両手を上げて喜ぶ。
「ぷっ……!」
アイリスは思わず吹き出した。
「ハッハッハ!」
コシオも大笑いする。
「ヒナタ、レインさんを倒しちゃったの?」
ヒカリが笑いながら尋ねる。
「うん!」
ヒナタは満面の笑みで頷いた。
床に倒れたまま、レインが呟く。
「強い……」
そして、ヒナタを見上げた。
「ヒナタちゃん、強すぎるよ……」
ナイトは何も言わず、女神のカメラをヒナタへ向けていた。
その様子を、コメント欄も見逃さない。
『レインさんヤラレタ?』
『ヒナタ最強説!』
『かみなりいっせん出た!』
『レインさん、技を伝授したのか?』
「違いますよー!」
レインが慌てて否定する。
ところが――。
ヒナタは再び、柔らかい棒を構えた。
「かみなりいっせん!」
「ひぃっ!」
レインが飛び起きる。
「逃げなさい、レイン!」
アイリスが笑いながら叫んだ。
「はいっ!」
レインは立ち上がると、そのまま逃げ出した。
「待てー!」
ヒナタが追いかける。
「ひゃー!」
「ハッハッハ!」
「もう、ヒナタったら!」
村長の家に、笑い声が響き渡る。
そして――。
コメライス村の夜は、穏やかに更けていった。
読んでくれてありがとうございます!
この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




