第82回「泥だらけの二人」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
コメライス村の田んぼ――。
コシオは、レインとアイリスに田植えのお手本を見せていた。
「こうやって植えていきます」
苗を手に取り、一定の間隔で植えていく。
「なるほど!」
レインは、コシオの手元をじっと見ていた。
そして――。
見よう見まねで苗を手に取る。
後ろへ少しずつ下がりながら、一つずつ苗を植えていく。
「こうかな?」
「そうそう。その調子です」
コシオに教えてもらいながら、レインは順調に田植えを進めていく。
ところが――。
突然、レインが声を上げた。
「あぁー! 足が抜けないっ!」
田んぼの泥に、レインの足がすっかり埋まっていた。
「あーん、ズブズブだわっ!」
アイリスも思わず声を上げる。
コシオは笑った。
「ハッハッハ」
「笑ってる場合じゃないですよー!」
レインが必死に足を動かす。
「最初は皆さん、そうなりますよ」
「そうなの?」
その様子を見ていたナイトが、冷静に注意する。
「勢いよく抜いたら、後ろに倒れるぞ!」
レインが振り返る。
「それって、倒れろってこと?」
「違うわよっ!」
アイリスが即座に突っ込んだ。
配信のコメント欄も、一気に盛り上がっていく。
『前フリか?』
『これは何か起こるぞ!』
『レインさん気をつけて!』
『ナイトさん、それフラグでは?』
「なんでみんな、そんなに楽しそうなのっ!」
レインは文句を言いながらも、田植えを続ける。
アイリスも隣で苗を植えていく。
最初は慣れなかった二人も、少しずつ田植えの作業に慣れてきた。
田んぼには、苗の列が少しずつ増えていく。
しかし――。
「……あぁー、曲がってるー!」
レインが、自分の植えた苗の列を見る。
「難しいわねっ!」
アイリスも苦笑する。
コシオは二人の田植えを眺めながら、頷いた。
「いやいや、上手ですよ」
「本当ですか?」
「ええ。最初にしては上手です」
「やったー!」
レインが嬉しそうに笑う。
そのまま田植えを続けていると――。
レインが、手元に残った苗を確認した。
「あれ? 苗、足りないな」
アイリスが自分の手元を見る。
「こっち、余ってるわよ?」
レインが振り向く。
「本当? あたしにちょうだい」
「はいよっ!」
アイリスが苗を渡そうと、手を伸ばす。
レインも受け取ろうと手を伸ばした。
あと少し。
もう少しで苗を受け取れる――。
その瞬間。
ガクン!
「わぁー!」
レインの身体が、大きく傾いた。
「あ、ちょっと!」
アイリスも、とっさにレインを支えようとする。
しかし、田んぼの泥に足を取られてしまった。
二人はお互いに支えようとして――。
「ちょっと待って!」
「動けないわっ!」
支えるどころか、互いに押し合うような格好になってしまう。
二人とも斜めに傾いたまま、身動きが取れない。
「コレは良くない!」
「もうコレ、詰んでるわっ!」
ナイトは女神のカメラを構えたまま、二人を見つめていた。
そして、冷静に一言――。
「まぁ、こういう絵もあっていいかもな」
「助けなよっ!」
「俺、ウェーダー着てないし」
「ぐぬぬ……」
次の瞬間――。
バシャーン!
「うぅー!」
「あぁー!」
二人の身体が、盛大に田んぼへ倒れ込んだ。
泥と水が大きく跳ね上がる。
レインもアイリスも、全身泥だらけ。
そして――。
ナイトは、しっかりと女神のカメラを構えていた。
「……撮れた」
「ナイトーーー!」
「もうっ!」
二人の叫び声が、田んぼに響き渡る。
コメント欄も大盛り上がりだった。
『前フリ回収した!』
『ナイス田植え!』
『二人とも泥だらけ!』
『ナイトさん、仕事したな!』
『最高の映像だ!』
レインは泥だらけの顔で、カメラを睨む。
「田植え……続けます」
アイリスも泥を拭いながら頷いた。
「ええ、最後までやり遂げましょう」
ナイトはカメラを構え直す。
「もちろん撮るぞ」
「ナイトも田植え……手伝ってよ!」
コメライス村に――。
三人の笑い声が響いた。
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この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




