第78回「もう一泊していい」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
――王都カルディア。
グランドホテルの露天温泉。
レインとアイリスは、肩まで湯に浸かっていた。
夜風が、火照った身体を優しく撫でていく。
レインは大きく息を吐いた。
「あぁー! 気持ちいいー!」
隣では、アイリスも湯に身を沈めている。
「最高だわぁ」
二人とも、すっかり力が抜けていた。
戦いの疲れが温泉のお湯とともに、ゆっくりと溶けていく。
二人はしばらく何も話さなかった。
ただ、静かな夜の王都の空を眺めている。
やがて――。
レインが、幸せそうに息をついた。
「もう一泊していいとか、国王さま太っ腹!」
アイリスは、思わず吹き出した。
「お願いだから、国王さまの前では言わないでよ」
「はっはー! 分かってるよー!」
レインは楽しそうに笑う。
アイリスはレインをじっと見る。
「本当に分かってる?」
「そこまで子どもじゃないもん!」
胸を張るレイン。
アイリスは苦笑しながら、肩をすくめた。
「……ちょっと心配だけどね」
「ひどーい!」
レインが頬を膨らませる。
そして――。
二人は顔を見合わせ、笑い声を上げた。
◇
温泉を満喫した後は、夕食――。
テーブルいっぱいに、豪華な料理が並べられている。
焼きたての肉料理。
新鮮な魚料理。
色鮮やかな野菜。
そして、食後のデザートまで。
レインは、目を輝かせた。
「これ……全部食べていいの?」
アイリスは料理を眺めながら頷く。
「良いんじゃない?」
ナイトも並べられた料理を見渡し、笑った。
「美味いものが食べられる」
そして、フォークを手に取る。
「これもまた、人生の楽しみだ」
レインは何度もうなずいた。
「うんうん!」
そして、ふと料理を見渡す。
「これが最後の晩餐ってヤツね?」
「そういうこと言わないで!」
アイリスがすぐに突っ込んだ。
レインは首を傾げる。
「えー!」
そして、思い出したように言った。
「昨日、アイリスも言ってたじゃんかー!」
アイリスは少し照れたように笑う。
「あれは冗談だったの!」
そして――。
少しだけ真面目な顔になる。
「でも今回は、本当に最後になるところだったんだからっ!」
レインは小さく声を漏らした。
「あっ……そっか」
一瞬だけ……。
テーブルを囲む三人の間に、静かな空気が流れた。
魔王5号――。
あの戦いでは、誰か一人でも欠けていたら――。
どうなっていたか分からない。
そんなことを、三人とも思い出していた。
すると――。
ナイトがフォークを手に取り、いつものように落ち着いた声で言った。
「だから今日は、無事だったことを祝って食おう」
レインの表情が、ぱっと明るくなる。
「そうだね!」
アイリスも笑顔で頷いた。
「いただきましょう!」
三人は顔を見合わせる。
そして――。
「いただきます!」
豪華な料理を囲んで、食事が始まった。
王都カルディアでの最後の夜は――。
美味しい料理と、三人の笑顔に包まれていた。
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※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




