第77回「本物でした」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
魔王5号が消滅した後――。
王都中央広場には、ようやく安堵の空気が広がっていた。
レインたちは、倒れているシグルドのもとへ駆け寄る。
「シグルドさん!」
「大丈夫ですかっ!」
シグルドは苦笑しながら、ゆっくりと身体を起こそうとする。
「ああ……大丈夫だ」
すると、そばで治療をしていた回復魔法師が慌てて声を上げた。
「あっ、まだ動かないでください!」
シグルドは苦笑する。
「ははっ、すまんな」
回復魔法師に促され、再び横になる。
そして――。
シグルドはレインを見つめ、静かに笑った。
「やっぱり、本物は別格だな?」
「え?」
レインが首を傾げる。
シグルドは、先ほど自分が放った一撃を思い返すように空を見た。
「俺の一閃は……届かなかった」
その言葉に、レインは首を横に振った。
「いやいや」
レインは笑う。
「シグルドさんの一閃も――」
そして、はっきりと告げた。
「本物でしたよ」
シグルドは、一瞬だけ目を丸くした。
やがて――。
ふっと笑みを浮かべる。
「……そうか」
そして、目を閉じる。
「それは、良かった」
その言葉を聞いたアイリスも、微笑んだ。
「二人とも、お疲れさまでした」
ナイトは、女神のカメラをそっと下ろす。
「いい締めだな」
王都カルディアを守った戦い。
それは、誰が一番強かったのかを競う戦いではなかった。
騎士団長の一撃。
仲間を支えた魔法。
命懸けで時間を稼いだカメラマン。
そして――。
最後に魔王を消滅させた、魔王予報士。
互いの力を認め合った者たちの笑顔が――。
その勝利を、何よりも物語っていた。
◇
魔王5号の討伐から、しばらくして――。
王都では、避難解除が発表された。
ナイトは女神のカメラを肩に担ぎ、街の様子を映していく。
「配信、続けるぞ」
レインたちは、そのまま避難解除の様子を配信することにした。
カメラが街を映す。
レインが、画面の向こうへ笑顔を向けた。
「皆さん、こんにちは」
そして、ゆっくりと告げる。
「魔王の討伐が完了し、避難解除となりました」
カメラには、城壁の外からゆっくりと戻ってくる住民たちの姿が映っている。
親子連れ……商人……冒険者……。
皆、ほっとした表情を浮かべながら、それぞれの家路へ向かっていく。
アイリスが街を見渡した。
「魔王のせいで、大騒ぎでしたね」
レインも、戻っていく人々を見つめる。
そして――。
笑顔で言った。
「でも、皆さんが無事に帰って来られて、本当に良かったです」
街では、少しずつ店が開き始めていた。
閉ざされていた扉が開く。
人々が店先を掃除する。
魔道具の明かりも、一つ、また一つと戻っていく。
王都カルディアに――。
少しずつ、いつもの日常が戻ってきていた。
レインは、安堵したように息をつく。
「死者は出なくて良かったです」
アイリスも頷いた。
「早めの避難が、実を結びましたね」
その言葉を聞きながら、ナイトはカメラをゆっくりと街へ向ける。
戦場ではない。
魔王もいない。
ただ、人々が帰っていく街。
ナイトは静かに言った。
「これが一番撮りたかった景色だ」
画面には――。
安心した笑顔で家へ帰る人々の姿が映し出されていた。
魔王は消えた。
そして――。
カルディアには再び、穏やかな日常が戻ってきた。
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この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




