第69回「王城からの配信」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
――王城・応接間。
レインたちは、急いで配信の準備を始めていた。
ナイトは女神のカメラを手に取る。
「よし、配信開始」
カメラのレンズが、三人を捉える。
レインは一度だけ深呼吸した。
そして、カメラへ向き直る。
「皆さん、こんにちは」
いつもの明るい声。
しかし、その表情は真剣だった。
「魔王予報のお時間です」
アイリスが続ける。
「緊急配信になります」
配信が始まる。
すると、次々とコメントが流れ始めた。
『レインさん、ドレスだ!』
『めちゃくちゃ可愛い!』
『あれ? 今日は魔王予報なの?』
『アイリスさんもドレス似合ってる!』
普段とは違う三人の姿に、視聴者たちは盛り上がっている。
レインはそんなコメントを見ながらも、表情を変えなかった。
「本日の夕刻……王都カルディア……」
そして、はっきりと告げた。
「魔王降臨確率は……100%です……」
コメント欄の流れが、一瞬止まった。
『え……?』
『100%?』
『カルディアって王都だよな?』
『王都に魔王ってこと?』
その時だった。
画面の横から、一人の女性が姿を現した。
「皆さん、こんにちは」
レインたちの隣に立ったのは、アンリエッタだった。
彼女はカメラへ向かって、にこやかに微笑む。
「カルディア王国第一王女、アンリエッタです」
その瞬間――。
コメント欄が一気に沸き立った。
『えっ!?』
『姫様!?』
『本物!?』
『王女様が配信に!?』
アンリエッタは落ち着いた口調で続ける。
「レインさんにお願いして、この場をお借りしています」
そして、視聴者へ向けて真剣な表情を見せた。
「先ほど、レインさんから魔王予報を聞きました。カルディア王国は、これより騎士団を出動させます」
アンリエッタは一度、息を整える。
「避難誘導も開始しますので、皆さんは落ち着いて行動してください。避難先は、城壁の外――城下町門前です」
コメント欄には、不安の声が流れ始める。
『怖い……』
『本当に魔王が来るの?』
『王都なのに……』
しかし、それだけではなかった。
『避難します』
『家族にも知らせます』
『隣の家にも伝えます』
『急いで準備する!』
不安の中でも、人々は動き始めていた。
レインはカメラをまっすぐ見つめる。
「まだ十分に時間はあります。慌てず、落ち着いて避難してください」
アイリスも続ける。
「皆さん、焦らないでください。騎士団も動き始めています。指示に従って、安全に避難してください」
カメラは三人とアンリエッタの姿を映し続ける。
王女が公式に伝える。
配信者が世界へ届ける。
そして――。
人々が動き始める。
王国と配信者――。
その二つの力が、一つとなって。
人々の命を守るために、動き始めた――。
配信終了――。
緊急配信を終えたレインは、国王へ向き直った。
先ほどまでの配信者としての表情とは違う。
真剣な顔だった……。
「国王さま……」
「うむ」
レインは深く頭を下げる。
「お願いします。この魔王降臨の現場を、配信させてください」
国王は静かにレインを見つめた。
その隣では、アイリスも一歩前へ出る。
「魔王の姿や強さを映像として残せば、今後の対策にも役立ちます。避難や討伐の研究資料にもなるはずです」
国王は腕を組んだ……。
応接間に、静かな時間が流れる。
やがて――。
国王はゆっくりと頷いた。
「よかろう。ならば、それも感謝状と合わせた褒美としよう」
「ありがとうございます!」
レインが嬉しそうに頭を下げる。
アンリエッタも微笑んだ。
「良かったですね」
ナイトは手にした女神のカメラを軽く持ち上げる。
「国王さまと姫さまのお墨付きだ。張り切って撮りまくるぜ!」
しかし、アイリスはすぐに釘を刺した。
「安全第一よ」
ナイトはカメラを構える。
「分かってるさ! そこは任せろ」
こうしてレインたちは、カルディア王国から正式に魔王降臨の撮影許可を得た。
その映像は、ただ人々へ現状を伝えるだけではない。
魔王の姿……その強さ……戦いの様子……。
そして、王国がどのように対応したのか。
それらすべてを記録する。
その映像はやがて――。
未来の命を守るための、大切な記録になろうとしていた。
読んでくれてありがとうございます!
この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




