第66回「感謝の言葉」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
――王城の応接間。
侍女は扉の前で一礼すると、静かにノックした。
コン、コン――。
「失礼いたします。お客様をお連れしました」
扉の向こうから、穏やかな声が返ってきた。
「入りなさい」
侍女はゆっくりと扉を開ける……。
レインたちは、侍女の後に続いて応接間へ入った。
部屋の中央には、大きなソファが置かれている。
そのソファには、一人の男性が堂々と腰掛けていた。
カルディア王国国王、ヘンリー三世――。
そして、その隣には一人の若い女性が立っている。
王女アンリエッタ。
侍女に案内され、レインたちはソファの前まで進んだ。
国王が優しく微笑む。
「よく来てくれたな」
穏やかな声だった。
「私がカルディア王国国王、ヘンリー三世だ」
その隣に立つ王女も、三人へ向けて微笑む。
「アンリエッタです」
レインたちは思わず背筋を伸ばした。
やはり、目の前に王族がいるというだけで緊張する。
すると侍女が、レインたちに聞こえる程度の小さな声で耳打ちした。
「お名前をどうぞ」
レインが元気よく返事をする。
「はい! レインです!」
続いてアイリスが一礼した。
「アイリスです」
最後にナイトも名乗る。
「ナイトです」
三人は順番に名乗った……。
国王は満足そうに頷き、ソファへ手を向けた。
「うむ、座りたまえ」
「はい、失礼します」
三人は静かに席へ腰を下ろす。
先ほどまで張り詰めていた応接間の空気が、ほんの少しだけ和らいだ。
王国から正式に招待された三人。
その理由は、魔王予報によって多くの人々に避難する時間を与え、魔王討伐を支えたこと。
そして今、その功績に対する感謝を伝えるために、国王自らが三人を迎えている。
レインたちは席につき、少しだけ姿勢を正した。
国王は穏やかな表情で三人を見つめた。
先ほどまでの緊張した空気が、少しだけ静かになる。
国王はゆっくりと口を開いた。
「まずは、礼を言わせてほしい」
レインたちは姿勢を正す――。
国王は一人ずつ、その名を呼んだ。
「レイン殿」
「アイリス殿」
「ナイト殿」
三人は静かに国王を見る――。
「このたびは、王国のために尽力してくれたこと。心より感謝する」
「い、いえ……」
レインは少し照れくさそうに答えた。
国王はそんなレインに微笑みながら、言葉を続ける。
「魔王は災害だ――。どれほど優れた騎士や勇者がいようと、降臨場所が分からねば、多くの民を守ることは難しい」
レインたちは黙って耳を傾ける。
国王は静かに続けた……。
「しかし、そなたたちの魔王予報により、避難を呼びかける時間が生まれた」
「その結果……多くの命が救われた」
アイリスが小さく微笑んだ。
ナイトも静かに頷く。
「もちろん、犠牲がなかったわけではない」
国王の表情が少しだけ曇る。
「それでも……守れた命が、確かにあった」
応接間に、短い沈黙が流れる。
そして国王は、三人をまっすぐに見つめた。
「その功績は、王国として正式に称えたい」
レインは少し照れくさそうに笑った。
「ありがとうございます」
国王は優しく頷く。
「こちらこそ、ありがとう」
その言葉には、一国を治める王としての、心からの感謝が込められていた。
レインたちは、しばらく何も言わなかった。
ただ、その感謝の言葉を静かに受け止めていた。
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※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




