第64回「馬車で入城」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
王都カルディアの朝――。
グランドホテルの前に、一台の立派な馬車が停まっていた。
やがて馬車の扉が開く。
ホテルスタッフが三人の前まで歩み寄り、丁寧に頭を下げた。
「お迎えに上がりました」
レインは目を丸くして、目の前の馬車を見上げる。
「え? ホテルから馬車で行くの?」
見るからに立派な馬車だ。
昨日まで乗っていた普通の馬車とは、明らかに雰囲気が違う。
アイリスも驚いたように馬車を眺める。
「これで、そのまま王城へ向かうのかしら?」
ナイトも馬車を見ながら、困惑した表情を浮かべた。
「俺たち、いつの間に貴族になったんだ?」
三人で顔を見合わせる。
どう考えても、自分たちは貴族ではない。
すると、昨日も世話をしてくれたポーターが、三人のところへやって来た。
「お荷物、お運びいたします」
そう言って、レインが大切そうに抱えていた衣装箱を受け取る。
「あっ」
レインが止める間もなく、衣装箱は丁寧に馬車へと運ばれていった。
そのまま他の荷物も手際よく積み込まれていく。
レインは、その様子をぽかんと眺めていた。
そして、ぽつりと呟いた。
「……あたし、ここに住みたい」
「ふふっ、気持ちは分かるわ」
アイリスが笑う。
ナイトも肩を揺らした。
「昨日から、ずいぶん気に入ってるな」
「だって、荷物まで運んでくれるんだよ?」
レインは本気で感動している。
三人は顔を見合わせ、また笑った。
そんなやり取りを交わしながら、三人は迎えの馬車へ乗り込んだ。
最後にホテルスタッフが一礼する。
「いってらっしゃいませ」
「行ってきます!」
レインが元気よく手を振る。
馬車の扉が閉じられた。
ほどなくして、馬の蹄が朝の王都に響き始める。
馬車はゆっくりと走り出し、三人を王城へと運んでいった。
◇
馬車の窓からは、王都カルディアの街並みが見える。
大きな商店。
立派な建物。
整えられた大通り。
そして、行き交う大勢の人々。
レインは窓の外を眺めながら、目を輝かせた。
「街並みも凄いなぁ」
しばらく眺めてから、ぽつり。
「都会だねぇ」
「ホミラタウンとは全然違うわね」
アイリスも窓の外を見る。
「人も多い」
ナイトも静かに呟いた。
王国の中心――。
多くの人々が暮らし、商業が栄え、様々な文化が集まる場所。
馬車はそんな王都の大通りを進んでいく。
やがて、建物の向こうに巨大な姿が見えてきた。
王城……。
遠くからでも分かるほど大きく、荘厳な建物だった。
レインは思わず身を乗り出す。
「……あれが王城?」
「そうみたいね」
「いよいよだな」
王城へ続く正門を、レインたちを乗せた馬車がゆっくりと進んでいく。
レインは窓の外を眺めながら、思わず声を漏らす。
「すご……」
「さすが王城ね」
アイリスも感心したように呟く。
ナイトも窓の外へ視線を向けた。
「規模が違うな」
馬車はそのまま敷地内を進み、やがて正門前で停止した。
すると、すぐに数名の従者たちが出迎えに現れる。
「お待ちしておりました」
従者たちは三人へ丁寧に頭を下げた。
そのまま、レインたちの荷物を受け取る。
「ありがとうございます」
レインも慣れないながら、丁寧に頭を下げた。
◇
三人は従者に案内され、王城の中へ入っていく。
廊下を進み、いくつもの扉を通り過ぎる。
やがて案内された先には、豪華な控え室が用意されていた。
大きなソファ。
綺麗に整えられた室内。
そして窓の向こうには、王都カルディアの街並みが広がっている。
「それでは、後ほど、お着替えのお手伝いに参ります」
従者が一礼する。
そして、穏やかな口調で続ける。
「それまでは、ご自由に。どうぞ楽にされてください」
「ありがとうございます」
レインが答えると、従者は静かに部屋を後にした。
扉が閉まる。
三人だけになる――。
大きなソファ。
立派な調度品。
三人はそれぞれソファに腰を下ろす。
さっきまでの緊張が、ほんの少しだけ和らいだ。
感謝状授与式まで、あと少し。
レインたちは少しだけ肩の力を抜きながら、その時を待つのだった。
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この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




