第61回「馬車の車窓から」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
朝――。
ホミラタウンの街を、一台の馬車がゆっくりと走り出した。
目的地は王都カルディア――。
レインたちは、カルディア王国からの招待を受け、感謝状授与式へ向かっていた。
馬車の中では、レインが嬉しそうにしている。
「まさかねっ! 王国に呼ばれるなんてねっ!」
その隣で、アイリスが苦笑する。
「喜びすぎだって」
ナイトも呆れたように言った。
「感謝状をもらうだけだぞ? 謁見と勘違いしてないか?」
レインが目を丸くする。
「え? 国王さま直々に渡してくれるとかは?」
「んなわけあるかっ!」
「えぇー!」
レインが残念そうな声を上げる。
アイリスは笑いながら肩をすくめた。
「まあ、お姫さまあたりが渡してくれるのでは?」
「えっ! お姫さま?」
レインの目が、きらきらと輝いた。
そんなレインの足元には、大きな衣装箱が置かれていた。
中に入っているのは、今回の式典で着るための正装。
配信ギルドが、レインたちのために貸してくれたものだった。
レインは箱に手を添える。
そして――。
すりすり……。
大切そうに箱を撫でる。
「この衣装を着て、お姫さまから感謝状か」
アイリスはすぐに釘を刺した。
「まだ決まってないからね?」
「えー……」
レインが少しだけ肩を落とす。
そんな三人のやり取りを乗せて、馬車は街道を進んでいく。
ガタゴト……。
ガタゴト……。
車輪が道を踏むたび、馬車が小さく揺れる。
窓の外には、広い草原がどこまでも続いていた。
遠くには牧場も見える。
のどかな風景。
そんな車窓を眺めていたレインが、突然顔を上げた。
そして、笑顔で宣言する。
「よーし! 特別配信、馬車の車窓から!」
「分かった!」
ナイトはすぐに女神のカメラを構えた。
そして、ゆっくりと車窓へ向ける。
魔法配信端末の画面に映し出されたのは、王都へ続く街道と、その周囲に広がる穏やかな風景だった。
今回も、突発的に始まった配信。
しかし――。
いつもの魔王予報ではない。
レインたちは最近、少し気にしていた。
魔王予報の配信ばかりを続けていると、視聴者が配信開始のたびに身構えてしまうのだ。
『配信が始まった!』
『魔王か!?』
そんなコメントが毎回のように流れる……。
レインは少し困ったように笑った。
「ビクビクされるのは嫌だしね」
アイリスも頷く。
「だから、こういうほのぼの配信も大事なの」
魔王が出てこない配信。
ただ景色を眺めるだけの配信。
そんな時間も、レインたちにとっては大切なものだった。
コメント欄にも、穏やかな言葉が流れていく。
『景色きれい!』
『癒やされるなぁ』
『今日は魔王予報じゃないんだね』
レインはコメントを見て、嬉しそうに笑う。
そして、窓の外を指差した。
「皆さん、ご覧くださーい!」
「馬車の車窓からっ!」
カメラが景色を捉える。
風に揺れる草原。
街道の向こうに広がる牧場。
その中を、牛の群れがゆっくりと歩いている。
「こういう景色って、落ち着きますよねっ」
レインがのんびりと眺めていると、アイリスが思い出したように口を開いた。
「そういえば私たち、王都から呼ばれてね?」
「感謝状をもらえるのよね」
レインも嬉しそうに話す。
「あ、そうなんだよねー!」
「だから今、王都へ向かってまーす!」
今回の旅の目的も、視聴者へしっかりと伝える。
コメント欄が一気に賑わった。
『おめでとう!』
『感謝状、すごい!』
『応援してる!』
レインは画面を見つめ、嬉しそうに笑った。
「ありがとう!」
その声は、いつもの明るいレインのものだった。
馬車の車窓から眺める、のどかな景色。
馬車は今日ものんびりと揺れながら、王都への道を進んでいく。
穏やかな旅路もまた――。
レインたちらしい配信のひとつだった。
読んでくれてありがとうございます!
この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




