第59回「過激な意見」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
――王宮会議室。
会議は、まだ続いている。
それまで黙っていた男が、ゆっくりと口を開く。
「……ひとつ、気になることがあります」
室内の視線が集まる。
「魔王予報士が予報した魔王は、これまで四体」
男は資料を指で叩いた。
「そしてーー、その四体すべてが、カルディア王国に降臨しています」
室内が静かになる。
「偶然かもしれません……」
男はそう前置きした。
「しかし、本当に偶然なのでしょうか?」
アルスが眉をひそめる。
「どういう意味だ?」
男はアルスを見た。
「可能性の一つとして……魔王予報士自身が、魔王を呼び寄せているのではないか?」
「なに?」
室内にざわめきが広がった。
「魔王を召喚する術があるとしたら?」
「そして、自分で魔王を呼び出しておきながら、それを予報する」
男は淡々と続ける。
「魔王予報という名前を使った、王国への攻撃……」
「そんな馬鹿な!」
アルスが思わず声を上げた。
「証拠はあるのか?」
「ありません」
男は即答した。
「ですが、可能性を否定する証拠もありません」
「四体すべてが王国内に現れている」
「そして、その場所を事前に知っていたのは魔王予報士だけです」
カタリナが険しい表情になる。
「それだけで、彼女を疑うのですか?」
「疑っているのではありません」
男は静かに答える。
「国家として、最悪の可能性を考えているのです」
ミネルバが口を挟む。
「でも、彼女の予報によって避難できた街もあるわ」
「結果として、被害を減らせたことも事実では?」
「ええ」
男は頷いた。
「だからこそ、判断が難しい」
「最初に信頼を得るための自作自演かもしれません」
その言葉に、室内の空気が重くなる。
さらに別の人物が口を開いた。
「もう一つ、考えなければならない問題があります……」
「他国です――」
「もし、魔王予報士の能力が他国に知られたら?」
「他国が彼女を引き抜こうとする可能性は十分にあります」
「その結果、魔王予報士が他国へ渡った場合……誰が責任を取るのです?」
誰も答えない。
「だからこそ、王国の管理下に置くべきです」
「少なくとも、自由に他国へ渡れる状態にしておくべきではありません」
騎士団長が口を開く。
「管理下と言っても、具体的にはどうするつもりです?」
男は少し考えた。
「王国との契約を結ばせる」
「活動範囲を制限する」
「魔王予報に関する情報を、王国へ報告する義務を持たせる」
そこまでは、まだ現実的な案だった。
しかし――。
別の男が、冷たい声で言った。
「それでも足りない」
室内の空気が変わる。
「もし、本当に魔王召喚の才を持っているのなら?」
「危険なのは、魔王そのものだけではありません」
「魔王を呼び出せる人間が、自由に活動していることです」
アルスが立ち上がる。
「だから、どうしろと言うんだ?」
男は、ためらうことなく答えた。
「隷属です」
「……!」
室内が凍りついた。
「王国に逆らえないようにする」
「魔王召喚の力を持つ者なら、それくらいの措置は必要ではありませんか?」
「ふざけるな!」
アルスが声を荒らげる。
「レインが何をしたっていうんだ!」
「魔王を呼んだという証拠もない!」
「それどころか、彼女は人を救っている!」
男は動じない。
「だからこそ、まだ決めつけてはいけないと言っている」
「ですが、もし本当に魔王を召喚できるのなら?」
「その時、誰が責任を取るのです?」
アルスは言葉を失った。
正しいとも、間違っているとも言い切れない。
ただ――。
今、この会議で話されていることは、あまりにも危険だった。
一人の少女の能力をどう扱うか。
それだけの話だったはずなのに。
いつの間にか――。
彼女の自由を奪う話にまで発展している。
騎士団長が重い口を開いた。
「……落ち着いてください」
「まだ何も分かっていない」
「魔王召喚の才があるという証拠もない」
「そして、魔王予報士が魔王を呼んでいるという証拠もない」
「現時点で、隷属などという判断を下すことはできない」
過激派の男は最後に一言だけ告げた。
「ならば、調べるべきです」
「魔王予報士が何者なのか」
「その力が、本当に人を救うためのものなのか」
「それとも――」
男は静かに目を細めた。
「王国を滅ぼすためのものなのか」
会議室に、重い沈黙が落ちた。
読んでくれてありがとうございます!
この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




