【改稿】第5回「自己紹介」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
ゴロゴロ山、山頂――。
女神は三人を鋭い眼差しで見下ろす。
まるで、こいつらはどこのどいつだと言いたげな表情だ。
『そもそも、お前たち。神聖な聖域で騒いでおいて、挨拶もなしか?』
(ここ聖域だったんだ……ちなみに聖域と聖地ってどう違うんだろう……)
そんな余計な疑問が頭をよぎるが、さすがにそれは口にしない。
余計な一言が多いのは自覚しているレインである。
おくちチャックなレインに対し、女神は冷たい目で腕を組む。
『まずはお前たち、今から自己紹介しろ』
「自己紹介?」
『そうだ。お前たちは何者なのか、私に聞かせろ』
「あっ、よく考えたら初対面だった……」
(お願いだから言葉使い気をつけてぇ……!)
アイリスはレインの言動にハラハラしながら心の中で叫ぶ。
「じゃあ、あたしから!」
レインは一歩前に出ると、神をも恐れぬ心意気で自己紹介を始めた。
「レインです!」
「あたしは天気予報士をやってます! 毎日の天気をみんなに伝えるのが、お仕事です! 晴れの日も雨の日も、みんなが安心して過ごせるように、天気をお知らせしてます!」
続いて、アイリスが一歩前に出る。
「私はアイリスです」
「レインと一緒に、天気予報の配信をしています」
穏やかな笑みで、アイリスは丁寧にお辞儀をする。
「それから、魔法使いでもあります。魔法を使ってみんなを支えるのが私の役目です」
「アイリスは何でもできるんだよ! 料理も上手だし!」
レインが横から自慢げに口を挟むと、アイリスは困ったように微笑んだ。
「そこまで言わなくてもいいでしょ?」
ふむ、と鼻を鳴らした女神は、最後に残った一人へ視線を向ける。
『では、お前だ』
「俺はナイトだ。カメラマンをしている」
神罰のせいでカメラが壊れたと言いたげな表情で言葉を続ける。
「……今は壊れてるけどな」
ナイトは、痛々しく地面に転がる魔導カメラに視線を落とす。
「俺の役目は、二人を撮影し世界に届けることだ」
「そういう感じ!」
レインが指を立てて同調し、アイリスも静かに頷く。
「私たちは三人で配信をしています」
「まだ始めたばかりだけどな」
付け加えるナイトの横で、レインは誇らしそうな表情で個人情報をバラまく。
「あたしたち、幼なじみで歳も近くて! あたし20歳、アイリス22歳、ナイト21歳」
呆れの感情を含んでいた女神の目が、少しずつ柔らかくなっていく。
『なるほど、お前たちはそれぞれ違う役割を持っているんだな』
ただの無謀な迷惑系配信者かと思いきや、世の中の役に立ちたいとの信念がある――。
女神さまは、三人に対する印象を少し改めた。
『わかった……では、話の続きだ』
そして、女神さまからお褒めの言葉が出てくる。
『お前たちは、大きく間違ってはいない』
「……え?」
(まさか、お説教のターン終わった?)
延々と怒られると思ったら、潮目が変わったと感じるレインだ。
女神さまは静かな表情で三人を見つめている。
『確かに、危険な場所で雷を配信したことは感心せん』
(あ、まだ終わってなかった……!)
レインは慌てて、しおらしい演技を復活させる。
『だが……お前たちは、危険な場所でも人々に天気を伝えようとした』
『見ている者たちに、空の様子を知らせようとした』
『皆の役にたとうという、その気持ちは本物だ』
レインは思わず息をのんだ。
女神さまは、レインたちの行動を確かに認めたのだ。
「……ありがとうございます」
レインは胸の奥が熱くなるのを感じる。
『だからこそ……もっと自分たちの命を大切にしろ』
どこか諭すようで、それでいて確かに温もりを含んだ女神さまの言葉――。
その言葉がまっすぐに届いて、レインは背筋をピンと伸ばす。
「はいっ!」
元気な返事が山頂に響いた。
――ゴロゴロ……。
耳をすますと、遠くの方で雷鳴がかすかに鳴り響くのが聞こえる。
さきほどまでのピリッとしたお説教の空気は完全に消えさり、少しだけ優しい風が通り抜けた。
女神さまはここからが本題だというような表情で目を細める。
『うむ、よい返事だ』
そして――。
女神さまは、レインの頭頂部をガシッと掴んだ。
「フガッ!?」
女神さまはそんなレインのリアクションもお構いなしに進める。
『ふむ……お前の持つ力は、天気を読む力か……』
その瞬間、掴まれた頭頂を起点にして、まばゆい光がレインを包み込む。
「これが……天気を読む力……?」
『そうだ……これはお前がもともと持っている力だ』
『そして、これが新しい力……』
女神は手に力を入れると、レインを包む光がさらに強さを増す。
ペカーッ!
あまりの眩しさに、レインは目をギュッと瞑った。
全身全霊がぽかぽかと温かくなるような、奇妙なトランス状態となる。
そして、ようやく光が収まった――。
新しい力が身体に入ってきたことをレインは実感する。
「なにこれ、すごい……」
不思議な力が湧いてくるような、そんな漠然とした感覚――。
そして、今まで見えなかったものが見えてくる。
黒い影――。
「……何?」
その黒い影は、はるか遠くの空にぽつんと浮かんでいる。
知らないはずの風景に、正体不明の黒いシルエット――。
「なんか黒いのが見える……」
女神さまもその黒が見えているようだ。
レインの言葉に頷き、そして真剣な表情に変わった。
『それはな……魔王降臨の予兆だ』
「魔王……?」
レインは、目の前の現実を少しずつ受け入れるようにつぶやく。
女神さまは、ゆっくりと語り始める――。
『この世界には、これから魔王が現れる』
『これから人間たちは、魔王という脅威に晒されることになる』
女神さまは期待に満ちた表情でレインを見つめている。
『だが、今のお前なら……』
『魔王が現れる前に、その兆しを知ることができる』
『そして……未来の危険を事前に知らせることができる』
女神が静かに告げる。
『その力の名は……魔王予報――』
『――世界を救う正義の力だ』
読んでくれてありがとうございます!
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