第57回「救える命、減らせる犠牲」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
魔王4号との戦いは、激しさを増していた。
勇者アルスたちは、王国騎士団と共に魔王へ立ち向かっている。
しかし――。
今回の戦場となった街には、ほとんど住民の姿がなかった。
レインの魔王予報によって、魔王が現れる前に避難が完了していたからだ。
普段なら、人々の暮らしで賑わっている街。
その場所が、今は静まり返っている。
聞こえてくるのは、戦う者たちの声と魔王の咆哮だけだった。
「行くぞ!」
アルスが剣を構える。
勇者の剣が光を放った。
一気に魔王4号へと斬りかかる。
ガキィン!
激しい衝突音が響いた。
その隙を狙い、ミネルバが魔法を放つ。
「炎よ!」
巨大な炎が魔王へ襲いかかる。
その一方で、カタリナは負傷した騎士たちの治療を続けていた。
「大丈夫です。すぐに治します!」
聖なる光が騎士たちを包み込む。
傷が癒えると、騎士たちは再び立ち上がった。
「ありがとうございます!」
そして、再び戦場へ戻っていく。
勇者、聖女、賢者――。
そして、王国騎士団――。
それぞれが自分の役割を果たしながら、力を合わせて魔王4号へ挑んでいく。
激しい戦いは、長く続いた。
そして――。
アルスの渾身の一撃が魔王4号を捉えた。
ズバァー!
魔王4号の巨体が揺らぐ。
やがて、その姿が紫色の霧へと変わっていく。
ゆっくりと。
少しずつ。
魔王の姿が消えていった。
戦いが終わった――。
王国は、再び魔王討伐を成し遂げた。
◇
その日の夕方――。
レインたちは、緊急配信を開始した。
いつもの明るい声での配信ではない。
今日のレインとアイリスは、いつもと違っていた……。
カメラの前で、静かに口を開く。
「皆さん、こんばんは」
声も表情も、落ち着いている。
レインは一度、ゆっくりと息を吐く。
「勇者の皆さま、騎士団の皆さま」
そして、静かに続けた。
「魔王討伐、本当にありがとうございました」
アイリスも頭を下げる。
「ありがとうございました」
二人は、しばらく黙っていた。
やがてレインが、ゆっくりと言葉を続ける。
「命をかけて戦ってくださった騎士団の皆さま」
「そして――」
一瞬、言葉を詰まらせる。
「命を落とされた方々に……」
レインは深く頭を下げた。
「心より、ご冥福をお祈りいたします」
アイリスも静かに頭を下げる。
「心より、お祈りいたします」
二人は、そのまま黙とうを捧げた。
配信画面も静かだった。
いつもなら、たくさんのコメントが流れている。
けれど今は、視聴者たちも言葉を選ぶように、ゆっくりとコメントを送っていた。
『ありがとうございました』
『ご冥福をお祈りいたします』
『勇者の皆さんも、騎士団の皆さんも、本当にお疲れさまでした』
『戦ってくれて、ありがとう』
一つ。
また一つ。
感謝と祈りの言葉が、画面を流れていく。
レインは、それらを静かに見つめていた。
そして、小さく頷く。
「……ありがとうございます」
レインはカメラへ向き直った。
その表情には、悲しみだけではないものがあった。
「命を守るために――。」
一言一言、確かめるように口にする。
「これからも、魔王予報を届け続けます」
アイリスも隣で頷いた。
レインはもう一度、カメラを見つめる。
魔王が現れることを止めることはできない。
それでも――。
早く知ることができれば、守れる命がある。
そのために。
レインたちは、これからも世界へ魔王の訪れを伝えていく。
その決意を胸に刻みながら――。
◇
その日の夜――。
戦いを終えたアルスたちは、街に用意された宿で休んでいた。
窓の外には、静かな夜が広がっている。
長い戦いを終えた三人は、部屋の中でそれぞれ思い思いに過ごしていた。
アルスは椅子に座り、今日の戦いを振り返っていた。
「……今回も、きつかったな」
ミネルバが頷く。
「ええ。でも、前回とは少し違ったわ」
「そうだな」
アルスも頷いた。
今回の戦場には、ほとんど住民がいなかった。
魔王が現れる前に、避難が終わっていたからだ。
カタリナが静かに口にする。
「街の人たちが避難できていた」
「それだけで、こんなにも違うんですね」
三人の間に、しばらく沈黙が流れる。
今日も騎士たちが傷ついた。
命を落とした者もいる。
決して、犠牲がなかったわけではない。
それでも――。
魔王3号の時より、多くの命を守ることができた。
カタリナが小さく微笑む。
「レインさんの魔王予報……」
アルスは少し考えた。
そして、静かに答える。
「魔王が来ることを知るだけで、人を逃がせる」
「戦う準備もできる」
「それだけで、救える命が増えるんだ」
カタリナは、その言葉を聞いて微笑んだ。
「だったら……私たちも、もっと頑張らないといけませんね」
アルスが頷く。
「ああ……次も、できるだけ多くの人を守ろう」
ミネルバも頷いた。
「ええ……」
三人は、それ以上何も言わなかった。
窓の外には、静かな夜空が広がっている。
今日、守ることができた命。
そして――。
守ることができなかった命。
その両方を胸に刻みながら、三人は静かに夜を過ごした。
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※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




