第55回「被害は小さくない」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
魔王3号は、勇者アルスたちによって討伐された。
その知らせは、瞬く間に世界中へ広がっていった。
魔王討伐――。
人々は、勇者たちの勝利を喜んだ。
「勇者が魔王を倒したぞ!」
「騎士団も一緒だったらしい!」
「やったんだ!」
街には歓声が上がる。
誰もが、魔王が倒されたことを喜んでいた。
しかし――。
その勝利の裏側には、大きな代償が残されていた。
カルディア王国の発表によると……。
死者、多数。
負傷者、多数。
街には、戦いによって壊された建物も残っている。
そして、救護所には次々と負傷者が運び込まれていた。
「次の方を!」
聖女カタリナは、休むことなく治療を続けていた。
杖を掲げる――。
柔らかな光が広がり、負傷者の身体を包み込んでいく。
カタリナは疲れた身体を押して、次の患者へ向かう。
一人。
また一人。
回復魔法によって、多くの命が救われていく。
けれど――。
どれだけ強い回復魔法でも、すべてを救えるわけではない。
失われた命を、取り戻すことはできない。
救護所の外……。
そこには、家族の帰りを待つ人々の姿があった。
誰かの名前を呼びながら、涙を流す者。
ただ静かに、俯いている者。
そして――。
もう二度と帰ってこない家族を思い、声を押し殺して泣く者。
魔王は倒され、勇者たちは勝利した。
それでも、戦いが終わっただけで、すべてが元に戻るわけではない。
壊れた家。
傷ついた人々。
そして、心に残った深い傷。
それらを元に戻すには、これから長い時間が必要になる。
夕暮れ――。
戦場だった場所には、まだ多くの人々が残っていた。
◇
王国からの討伐報告――。
ホミラタウンにいるレインたちも静かに受け止めていた。
魔法通信端末の画面には、被害状況が映し出されている。
レインは何も言わなかった。
ただ、画面を見つめていた。
しばらくして、アイリスが静かに口を開く。
「被害は、小さくありませんでしたね」
ナイトも画面を見つめたまま答える。
「だからこそ、予報には価値がある」
レインは小さく頷いた。
魔王が現れることを知らせる。
それだけで、すべての被害をなくせるわけではない。
それでも――。
事前に知ることができれば、避難できる人がいる。
レインは両手をぎゅっと握った。
「もっと早く、もっと正確に伝えられるようになりたい」
その声には、いつもの明るさとは違う強い意志が込められていた。
読んでくれてありがとうございます!
この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




